Q. 金型にものすごくお金がかかるというのは本当でしょうか?

本当です。 金型はスケジュールも財布も圧迫するものづくり界最大のリスクファクターです。 例えば、ちょっとした箱、上下で挟み込むような構造のものを作るだけで、場合によっては数百万単位の費用がかかります。 もし構造が複雑であったり、複数の素材を使用した多色成型であったり、精度に大きな制約があった場合はさらに上がり、1000万円以上かかるようなケースも決して珍しくはありません。なお自動車のフロントパネル(内装)のような大きな樹脂部品の金型では5000万円以上かかることもあるそうです。 大きなイニシャルコストは価... Read More >>

Q. 電子機器を製品で出すときに法規制ってあるんすか?

これは非常によく受ける相談で、実は法規制の全体像について体系立てて説明してくれている良いコンテンツはあまり無いように思います。理由は規制は国ごとに異なる上にコロコロ変わるからだと思います。 したがって大抵大きな企業では規格に関して調査する専門の部門が存在していて常に各国の動向にアンテナを伸ばしています。 小さな企業では必要なタイミングで外部のコンサルタントに意見を聞くことが多いです。 さて、ここでは厳密性というよりは極力全体像を捉えることができるように説明したいと思います。最新の情報や詳細は適切な機関から... Read More >>

Q. 価格設定のやり方がさっぱりわかりません

製品をリリースする時に必ず決めなければならないのが価格です。 一般に「原価の3倍にしておけば大丈夫」という雑な言い方がされますが、これがなかなか絶妙なもので大抵的を得ています。 まず価格を決める際に考えなければならないことが「ビジネスモデル」と「事業形態」です。 ビジネスモデルは端的に言えば「どうやって儲けるか」です。 製品を売ってそこで利益を取るシンプルなモデルもあれば、製品購入者にサブスクリプションのサービスを提供してそこで儲けるモデルもあります。また製品本体では儲けを取らず、付属品やオプションのサー... Read More >>

Q. 取説って何を書くべきですか?

取扱説明書(取説)はその名の通り製品の取り扱い方の説明が書いてあればそれで良いかというと、微妙に違います。 ここではその点について解説します。 <取説は規格関連の記載場所でもある> 様々な規格に関係して取説への記載を求めるあるいは推奨されるものが少なくありません。 試しに電子機器製品の取説を見てみると、いわゆる取り扱い方が記載されているもの(カラフルであったり紙が立派であったり読みやすいもの)とは別に、やたら長文が各国言語で書いてあるもの(白黒で文字が小さく読みにくいもの)が入っていることが多いと思いま... Read More >>

Q. 自社の社員に法規制に詳しい人間がいない。どうするべきか?

法律関係の話は失敗した時のリスクが極めて高いです。したがって必ず専門家の意見を聞く必要があります。 とはいえ立ち上げたばかりのスタートアップなどではそういうツテが無いことがほとんどではないかと思います。 以下にいくつか具体的な問い合わせ先の探し方について書いておきます。 <生産に向けての十分な資金がある状況> 規格関連の情報を提供したり具体的な申請作業の代行をするエージェントという仕事があります。 大掛かりな組織としてやっている会社もあれば、フリーランスのような形で仲介をしてくれる方もいます。ネットで軽... Read More >>

Carbon Capture and Storage(炭素回収&貯留)を理解する ②

前回のポスト に引き続き、edXにてEdinburgh Universityが提供しているオンラインクラス “CCSx: Climate Change: Carbon Capture and Storage” で学んだことを、自らのメモの意味合いで何回かに分けてサマライズしておく(ついでに誰かの役に立てば幸いだ) CCSが入り込んでいく領域 製造業ではコンクリートと鉄鋼業。そしてエネルギー。再生可能エネルギーと原子力を推し進めるだけの脱炭素では我々の世代のうちにCarbon Bud... Read More >>

Q. 会いたくても会えない人なんて存在しない?

シリコンバレーに行って大きく変わった価値観のひとつに「会えない人はいない」というぼんやりとした開放感があります。 万能感と言っても良いかも知れません。 シリコンバレーでは日本で生活していた時よりも一際人脈の重要性が上がります。 ひとつは雇用プロセスの性質の違いです。シリコンバレーではほとんどの採用活動がカフェやレストランで行われていました。これは単に場所の話ではなく、それらの基本的プロセスがほぼプライベート空間で行われていたという意味です。 採用を目的に1, 2度オフィスで面談して採用通知を出すというよう... Read More >>

Q. テクノロジーは人を幸せにするのか?

そんな疑問を持ち出したのは自ら事業立ち上げを進めていた2015年ごろです。 このような一見荒唐無稽な問いも、ふと飲み会などの場でクチにしてみると、非常に多くの起業家やエンジニアが共通性のある問いを抱えていることに気付かされました。 事業について考える際に欠かせないものが哲学的思考です。 「哲学」という単語を使うと何やら高尚なお話のように聞こえてしまうかも知れませんが、実際はそんな大層な話ではなく要するに「普通だと思っていることを疑え」というスタンスのことです。「なぜなぜを繰り返せ」と言うとわかりやすいです... Read More >>

Q. 専門性を活かすキャリアとしてスタートアップは選択肢に入るのか?

スタートアップには案外様々な人がいます。 若く野心的でパワーに溢れ、見るからに「スタートアップにいそう!」という人もいれば、どう見ても普通のサラリーマンのおっちゃんにしか見えない人もいます。 会社によっては「うちは飲み会やっても全然人が集まらない」というようなスタートアップもあります。メンバーの平均年齢が高く、家庭があったり子供が生まれたばかりだったり、あるいは社交性が低く職人気質な人たちばかりで構成されているようなケースです。パリピ感ゼロです。 いわゆる若者たちが集まって夜遅くまでワイワイやって土日はみ... Read More >>

「わかんないけど、わかるよ」のバリュー

何言ってんだこいつは?というタイトルだが、とても大事なこと。 先日友人との会話の中に出てきたフレーズだ。 スタートアップを単独創業した経営者を想像するとわかりやすいのだが、時に人はひどく孤独だ。 経験豊富な経営者であったり、積み上げた失敗の反省の上にさらに今を積み上げようとしている人は、その文脈において、まさに孤独だ。 世の中大きめの失敗をしながらももう一度何かをやろうとする人は少ない。 したがって必然、成功者たちの中にはどうしても「成功しか知らない人」が多くなってしまう。 彼らに手痛い失敗の入り口はわか... Read More >>

Q. 海外に行く上でアメリカを選んだ理由は何でしょう?

私が元々アメリカに興味を持った理由は、当時扱っていた製品の市場でした。 ヤマハは主に楽器や電子機器を開発製造販売している会社ですが、ほとんどの製品でメインの市場は北米でした。 そのため流行りの多くはアメリカから来ることが多く、その意味で常に注意を向けていました。 20代の頃の発想なんてとても純朴なもので「でっけえ市場を自分の目で見てみてえな!」というある種の憧れに近い感情を抱いていたのだろうと今となっては思います。 その後アメリカに駐在に行く先輩たちを見送りながら「いずれ自分も」と思い続けていましたが、結... Read More >>

Q. 技術者は常に流行りの技術を身につけるべきでしょうか?

以前「ソフト屋とハード屋どちらが得か?」という論考をブログに書いたことがあります。 議論の詳細は省きますが、結論としては「ソフトウェアエンジニアとハードウェアエンジニアの技術体系の特性には大きな差異があり、それによって必然的に社会から求められる振る舞いが変わってくるが、それに直接的な優劣は存在しないため好きな方を選べば良い」というものでした。 その特性の差異というものは、具体的には「何をベースにしたエンジニアリングか」という点の違いです。 ハードウェア関連のエンジニアリングはベースが自然科学です。物理学、... Read More >>

ベストセラー「人新世の資本論」を読む②

ベストセラーであると同時に斉藤氏を一躍時の人へと押し上げた「人新世の資本論」をだいぶ前に読んだのだが今更ながらまとめを行う(少々長いので2回に分ける)あくまでメモとしての扱いであって、これによって何かを主張するものでない。が色々非常にためになった。 ちょっとでも興味のある人はできれば直接読んでおくべきだと思う。このまとめがその助けになれば好ましい。 個人的にはこの方の「現状分析」は非常に秀逸で参考になるところが多くあり、しかし一方で「対策」や「ビジョン」の部分は弱いと感じている。 <共同体> 【共有財と... Read More >>

ベストセラー「人新世の資本論」を読む①

ベストセラーであると同時に斉藤氏を一躍時の人へと押し上げた「人新世の資本論」をだいぶ前に読んだのだが今更ながらまとめを行う(少々長いので2回に分ける)あくまでメモとしての扱いであって、これによって何かを主張するものでない。が色々非常にためになった。 ちょっとでも興味のある人はできれば直接読んでおくべきだと思う。このまとめがその助けになれば好ましい。 個人的にはこの方の「現状分析」は非常に秀逸で参考になるところが多くあり、しかし一方で「対策」や「ビジョン」の部分は弱いと感じている。 <搾取だらけの世界で幸... Read More >>

Q. ほとんどの仕事がAIに取って代わられるというのは本当か?

よくあるテーマなのでご多分に漏れず私見を求められることがあります。 【肯定的異論①】 ほとんどの仕事は自動化される。AIの方が人間よりも精度が高い物事が沢山あるのだから当たり前だ。 しかしそれは産業革命から高度経済成長、IT革命など歴史上の様々なシーンで起こってきたことと同じだ。したがっていたずらに恐れる必要はなく、「人間が行うべき仕事の範囲」の自然な変化が緩やかに発生すると考えれば良いだけだ。 【肯定的異論②】 AIは圧倒的に人間に勝る。じきに人間がやるべきことは何もなくなるだろう。 より高精度なAIを... Read More >>

Q. エンジェル投資家との正しい関わり方は?

エンジェル投資家については様々な定義がありますが、ここでは「こんな偽エンジェル投資家とは組むな」という角度から真のエンジェル投資家の定義をすることを試みます。 こんな偽(エセ)エンジェル投資家とは組むな! ①株式の比率にこだわる エンジェル投資家の多くは既に人生のすごろくを一回あがってしまった方々です。 自らの事業や関わったスタートアップで大きなキャピタルゲインを得た方や、大手の重役を長年勤めて退いた方などです。 彼らが自らの新たなチャレンジも行う傍ら、若者の可能性や大胆な試みを応援するために投資活動を... Read More >>

Q. スタートアップに搾取はある?

スタートアップではよくやりがい搾取という言葉が聞かれます。事業に十分なやりがいがあったとしても、金が無いスタートアップはそれ相応の賃金を払うことができないので、低賃金で過重労働を課したり、あるいは無報酬で多くの人間に関わってもらったりすることがあります。 私はそれに対してあまり否定的な立場は取りません。 モチベーション スタートアップに来る方のモチベーションというのは人それぞれですが、多くの人にある程度共通して言えることとしては、既存企業、場合によっては大企業に失望してその埋め合わせをスタートアップに求... Read More >>

Q. 起業のとき親に金を借りるのが良いって本当?

シリコンバレーで友人のMBA持ち経営者に言われてハッとしたことがあります。 「出資はワーストケースである」 関連してこのような言葉もあります。 「IPOは資金調達できなくなったら仕方なくやる」これらはスタートアップ運営における資金調達について多くの示唆に富んでいます。 ビジネスはどのようなものでも重要なことはリスクとリワードのバランスの制御です。こと資金については、お金に色は付いていません。羽も生えていなければ、強いも弱いもありません。 どこから引っ張ってきたとしても1円は1円です。したがって資金調達の手... Read More >>

Q. 起業家と詐欺師は紙一重?

「アクリル板1枚で4億円だったよ」と冗談ぽく笑うのは起業家のIさん。 彼はTech Crunchに登壇する際にまだ影も形もない製品のイメージを伝えるために小さなアクリル板を使ってプレゼンをしたのです。 結果的にはそれが非常にウケて、その後4億円の出資を受けることに成功しました。彼は当然詐欺師ではないので、その後きちんと事業を立ち上げARの先駆者として今でもリスペクトを受けています。 しかし彼はその後、次の会社で似たようなやり方で資金調達したものも、事業立ち上げが上手くいかず迷走し、最終的には創業者CEOで... Read More >>

Q. 100万台売らない製品で凝ったことをしてはいけない?

開発は一筋縄ではいきません。 開発途中での仕様変更、問題解決の目処が一向に見えないまま期限が迫る、金型作り直し、特許使用料交渉の決裂、様々な課題が立ちはだかります。ちなみに私は「工場が火事で部品燃える」という経験もあります。 さて、製品を出すことに対しては多くの関係者がコミットメントを持っています。 したがってちょっとやそっとの問題や課題で諦めるわけがありません。 しかし、実際冷静になると「ここまでやる必要あるのか?」というところまで追い込んでしまっていることが実はよくあります。 自分自身も身に覚えのある... Read More >>

管理したがる経営者の意外なネガティブ面

私は仕事上多くの経営者の方々と関わりを持っていますが、 時に友人的にビジネス談義したり、時に仕事のパートナーとして共同作業に取り組んだり、 時にどちらかが依頼者でどちらかが受託者となるある種の従属関係の下で仕事をすることもあります。このようないくつかのパターンの中で色々な会話をしていくと、先日ふと気づきがありました。 ある種パターン化された落とし穴と言って良いかと思います。 「管理したがる経営者」について。一般には管理したがる経営者は、 ・細かいところまで現場に干渉したがる ・自分で全てを把握してコントロ... Read More >>

ものづくり、IoT開発、スタートアップ運営、気軽に相談してください

九頭龍(くずりゅう)です。 いくつかの会社で取締役を務めさせていただきながら、顧問、アドバイザー、時折ハンズオンのコンサルなどでも多くの企業と関係を持たせていただいています。 また東北大学で特任教授(客員)を務めさせていただくとともに、東京工業大学、武蔵野美術大学などでも教鞭をとらせていただいています。 最近は以下の書籍を出版させていただきました。 私の取り柄は、ルーツがコテコテのエンジニア(専門は電気回路)でありながら、技術全般の広い知識と経営の経験、さらに泥臭くビジネスのディールを構築するところまで一... Read More >>

脱プラスチックのシンプルなソリューション “LEEF”

脱プラの話は基本的に代替材料の話だ。私は高分子は専門ではないので正直よくわからない領域だが、彼らほどシンプルなソリューションであればよくわかる。 以下のBerlinで行われたカンファレンス動画で紹介されているLEEFというポツダム拠点の会社はPlam leafを用いた極めてシンプルな提案をしていた。 プロセスは極めて簡潔だ。 Palm leafの落ち葉を大量に集めて 乾かして 洗浄して プレスして(板金のプレスと同じノリに見えた) 熱を加える ポイントはこれでDisposalな製品を作るわけではなく、... Read More >>

キノンのカルボキシル化を利用した炭素回収システム

DACC(Direct Air Carbon Capture)はIPCCの第六次レポートでも「オプションではなく、DACCなしでは目標は達成されない」と明示された大注目の領域だ。 しかし既存の技術(例えばClimeworksなど)では巨大なプラントが必要であり、吸着と放出に温度および気圧のスイングが必要になること(エネルギー負荷も大きいこと)、コストが非常に高いこと、などなど課題は多い。 ここで紹介するVerboxはMIT発のテクノロジーで上記の多くの課題を解決する可能性を秘めている。 Youtube動画... Read More >>

そういえば私はパラパラを踊っていない

40代を迎えると、いや30代の後半に差し掛かってからかも知れないが、確実に感じることがある。 若者が何を考えてるかさっぱり分からない。 ミレニアム世代、Z世代。 TikTokの何が楽しいのかさっぱりわからないし、オンラインゲームやFPSにハマるのもさっぱりわからない。 流行りのアイテムを見ても何が魅力はわからないし、ウケてる芸能人やYoutuberも何が良いのかさっぱりわからない。 これはヤバい。 というのが単純なおっさん的発想なのだが、先日木村拓哉がテレビに出ているのを観て何故か突然昔のワンシーンの記憶... Read More >>

書籍プチ解説 〜目次について〜

2022年5月18日発刊予定で書籍を出版します。(Amazonは5/20の予定。書店は順次となります)そこでちょっとずつですが書籍の内容について解説および紹介をしていこうと思います。 幸せなIoTスタートアップの輪郭 本書の章立ては 第一章:スタートアップの基本を理解しよう 第二章:スタートアップの運営によくある悩みを理解しよう 第三章:IoT機器開発の典型的な躓きを理解しよう 第四章:一通りわかったつもりになったらもう一段レベルアップしよう という構成になっています。 第一章はかなり汎用的に通用する... Read More >>

空気の研究

マスクと空気(通気性の話ではない) 先日とある人物との会話の中で 「ここら辺の外(道幅は広く、駅からはだいぶ遠いので人は疎ら)を歩く時に何でみんなマスクしてるんですかね?」「え?そんなの忖度に決まってるでしょ。もしたまたま誰かにノーマスクを目撃された時に何か悪い印象を持たれるリスクに備えてるだけ」「今更そんなことでネガティブな反応する人いるんですかね?」「うーん、それは世の中の空気次第でしょ」 というようなやりとりがあった。 日本では恐らく昨今そこら中でそんなやりとりが行われてるのではないだろうか。そんな... Read More >>

実は本を書いていました

本日見本が届きました。5/18以降に全国の書店およびAmazonで発売開始する予定です。 この本は、私が色々な企業で顧問やアドバイザーを務めさせていただく過程で、あるいは友人や後輩からの質問として受けてきた典型的な疑問やつまずきに対する回答をまとめたものです。 ものづくりには関わっているがIoTはさっぱりわからない人、IoTには知見があるがスタートアップの実態については見たことも聞いたこともない人、夢だけあって事業は立ち上げたいけど右も左もわからなくて困っている人、様々な方に向けてのアドバイスやヒントが散... Read More >>

池上さんの「世界の見方・ロシア」からポイントを整理

東京工業大学の同僚(笑。言うまでもなく全然立場が違う)の池上彰さんの以下の書籍を読んだ。ポイントを備忘的に整理したい。 ttps://www.amazon.co.jp/dp/B07KW144RJ/ref=cm_sw_r_tw_dp_X8YYDC0ZHJB4W9R5X3FJ <そもそもの地政学的な習性> ロシアは東西に長く、多くの国と国境を接している。 つまり多くの国から侵略されるリスクが常にある。 第二次大戦でも最も多くの死者を出したのは実はソ連で「陸地が繋がっている隣国にとんでもない無法者(当時はナチス... Read More >>