そういえば私はパラパラを踊っていない

最終更新日

40代を迎えると、いや30代の後半に差し掛かってからかも知れないが、確実に感じることがある。

若者が何を考えてるかさっぱり分からない。

ミレニアム世代、Z世代。 TikTokの何が楽しいのかさっぱりわからないし、オンラインゲームやFPSにハマるのもさっぱりわからない。 流行りのアイテムを見ても何が魅力はわからないし、ウケてる芸能人やYoutuberも何が良いのかさっぱりわからない。

これはヤバい。

というのが単純なおっさん的発想なのだが、先日木村拓哉がテレビに出ているのを観て何故か突然昔のワンシーンの記憶が呼び起こされた。

「スマスマ」という番組だったと思うが、木村拓哉がお立ち台の上でパラパラを踊っている光景だ。
当時、現代で言う『パリピ』とは程遠かった私はパラパラというものを見たのはそれが初めてだった。 それから世の中は空前のパラパラブーム。 学校(確か当時は高校生)でも音楽を流しながらふざけ半分で踊っている輩がいたような記憶がある。

ふと気がついた。

私はパラパラを踊ったことがない。

パラパラを踊らなかったし、ラルフローレンも着てなかったし、ポケベルも持ってなかったし、エアーマックスも履いてなかったのだ。

仮に私がZ世代の一員として生まれていたとしても、きっとTikTokはやらないし、Youtubeも流行りのYoutuberではなく、きっとマニアックな物理実験モノとかプレミアリーグの好プレー集とかギターテクの解説とかそんなのだけしか観ていないのだろう。

何も変わらない。

私は私として順調に育っているだけで、だからわからないことがわからないのは当たり前なのだ。 だって仮に同世代だったとしてもきっとわからないのだから。

だからあまり気にする必要はないのだ。(だって元からそんなんだもの)

では何故そんなことが気になるのだろう?

ひとつには、今や「製品やサービスを提供する側」へと回っている、という点が挙げられる。
つまり「市場を理解しなければならない」という半ば脅迫心だ。
しかし冷静に考えてみれば、私がまだ若者に属していた頃もだいぶマニアックな製品を作っていた。
大衆ウケではなく、しかし少数にきちんと刺さる製品作る、というのがいわば矜持だったはずだ。
これも変える必要は特にない。
したがって仮に若者市場で売りたいのであれば、パラパラを踊っていない若者を掴まえれば良いのだ。

もうひとつ考えられる理由があるとしたら、単に弱くなったのかもしれない。
若い頃、と言わず、かなりの年齢まで私は 「例え世界で自分一人になったとしても、正しいと思うことを貫く!」 くらいの尖った考えを持っていたように思う。
製品やサービスについてもそうだし、考え方そのものについてもそうだった。
しかし今はちょっと違う。
自分一人でできることの限界も身に染みてるし、そもそも独りで何かを成し遂げることは虚しいとすら感じている。 自分のパフォーマンスを出すことだけでなく、他人のパフォーマンスを出すことにも喜びを見出せるようになってきている。
できるだけ仲間がいた方が、失敗した時のショックは小さく、成功した時の喜びは大きくできると知っている。

パラパラを踊ってる仲間がいてもいいんじゃないかな。そう思っているのかもしれない。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

シェアする

1件のコメント