なぜ私はシェアリングエコノミーが嫌いなのか

私はある種シェアリングエコノミーに対して否定的な態度だ。以下長文になる。タイトルでイラッとした人は読まない方が良いだろう。きっとより一層イラっとするだろうから。冒頭「ある種」と書いたのは弱めて言えば「限定的に」強めて言えば「だいたいは否定的で一部は違うけど」という意図だ。最初にそこらへんを紐解いておかないと読みづらいと思うのでまずはそこから。さて、シェアリングエコノミーには大きく分けて・資産のシェアリング・労働力のシェアリングがあると考えられる。「労働力も労働者が持つ資産の一部だろ」という批判はここでは受... Read More >>

逃げるは恥ですらない、上策である 〜 狂気に頼らない生き方を 〜

「ミシシッピ計画」という言葉をご存知だろうか。18世紀のフランスで発生した史上最大級のバブルのことである。詳細な説明は専門書にお任せしたいが、ここでは話が通じる程度にかいつまんで以下で説明する。 18世紀初頭のフランス経済は落ち込んでいた。亡きルイ14世の浪費のためである。しかしそれを憂う摂政(実質的な最高権力者)も、また周囲の人間も凡庸で、さしたる解決策を見いだすことができていなかった。そこに現れたのがスコットランド人のジョン・ロー。彼は数学に天才的な頭脳を持つものも、倫理観に乏しく、賭博で財を築き、酒... Read More >>

キャリアに悩めるあなたに

以前とある「漠然とした悩み」が話にあがり、私なりのコメントを返す、なんていうやりとりがありましたが、あとで振り返って、一般にも通用する内容だったなと思えたので以下にまとめ直してみました。キャリアに対してどうモチベーションを保っていくか悩んでいる人にとって何かの参考になれば幸いです。対象者は、・ある程度キャリアを積んでいる・現在やっていることが自分の成長に繋がっているのか確信が持てない・どちらかというと他にやりたいことがあるというような人です。私のルーツはコテコテのエンジニアですが、以下に示すことはエンジニ... Read More >>

メディアに出るということ

先日「日経ビジネス」「日経コンピュータ」で紙面デビューを果たしました。わーい。昨年登壇させていただいたカンファレンスのレポート記事ですが、今年も継続的にホットな話題であろう「AI」の文脈の中で登場させていただいていることにも関係者の方々に深く感謝いたします。 さて、枕詞はこのくらいにしておいてきちんとネタバラシをしよう。カンファレンス登壇のご招待はそもそも私が取締役を務める会社の子会社であるスイッチサイエンス宛に受けたものだった。それが広報レベルでどのようなやりとりがあったかは私は関知していないが、私にミ... Read More >>

技術が無限に伸びていくという幻想に冷や水 〜ムーアの法則と感情AI〜

先日妻が 「人の感情を読み取ってレコメンドするAIが今後発展して云々」 という記事を読んで「そら恐ろしい」とコメントしていた。彼女は元看護師である。 医療は万能ではない。治せる患者もいれば治せない患者もいる。 必ず治るのに今が不安でたまらない方もいれば、検査の結果が出るまでに体調を崩してしまうような方もいる。 そんな状況で看護師は「人が何をして欲しいか」「今どういうことを考えているか」「どういう寄り添い方ができるか」を真剣に考え、アクションに変えなければならない非常に難しい職業だ。何が彼・彼女が好きなもの... Read More >>

2019年下期に読んだ本をひたすら貼る

順不同だが昨年下期に読んだ本をひたすら貼る。つくづく雑食である。なお技術系はキリがないので一切含めていない。あとフラッと本屋で買って読んで処分してしまったものも(意図的ではないが)含まれていない(たぶん)今更感があるものも多く並んでいるが、むしろそういう「読もうかと思ったけど読んでなかったもの」を読む時間が取れたことが非常に有意義だったように思う。 ... Read More >>

Who am I

九頭龍です。 最近自己紹介が複雑になってきたのでこちらにまとめておくことにします。 初対面の方のためのかなり端折った自己紹介になっていますので、もしもう少し突っ込んだ内容に興味を持たれた方は適宜このブログの他の投稿を参照いただければと思います。なおとあるところでアレンジいただいた自己紹介は以下のとおりです。 『日本の大企業』と『シリコンバレーのアーリースタートアップ』の両面の経験を持つハードウェアエンジニア。 1978年東京都出身。2003年東京工業大学大学院を卒業後、ヤマハ株式会社に就職。多くの製品開... Read More >>

ググレカスとテラワロスは幼馴染

ローマ帝国元老院議員のググレカスと詩人のテラワロスは竹馬の友である。(Wikipedia参照) もはや20余年前となるネット黎明期を思い起こすことができた。いわんや「ネットの情報を信頼するかどうかは慎重に」と。インターネットリテラシーというやつだ。(死語?) ここで上記問題の「ことの真偽」は問題にはしない。私は歴史学者ではないし言語学者でもないしその点について一切興味がないからだ。そもそもググレカスがどういう人間だったかということはなにぶん昔の人のことだし、あとググルカスという名前のよく似た人物もいたらし... Read More >>

起業は社会人スポーツみたいなもの(必然性の視点)

やるべきか、やらざるべきか、それが問題だ社会人として生きていく以上様々な外界(他人、外国、宇宙?)との付き合いが発生する。それらには溢れんばかりの課題や不具合が転がっていて、それらは「解決すべきではないのか?」とあなたの心を揺さぶる。健全な魂は健全な肉体に宿るやるべきことをやらないのはストレスである。自分がその解決策に気付いていたりしたら尚更だ。酷く健全ではない。 しかし一方でやるべきことが複数あるということは社会人であれば誰もが知っている。社会問題を解決するのも良いがそれで家族を路頭に迷わすのはどうだろ... Read More >>

リスクアセスメントとリスクマネージメントの違いについて説明するとスタートアップの精神が説明しやすくなる

リスクアセスメントとリスクマネージメントはひとによっては同じ言葉のように捉えているひとがいたりもするのだが、当然意味合いは違う。 とりあえず教科書的に言っておくと、 リスクアセスメントとは「assess=評価する」のとおり、リスク自体を過去の経験や賢人のノウハウから認識して定量化および資産化することである。 リスクマネージメントはそれを「manage=管理する」ことである つまりアセスメントがあって、その後にマネージメントがあるわけだ。 あ、ちなみに端折ってしまったがリスクというのは一般にはリリース... Read More >>

数字もいいけど現場の知識

事業計画書の手本的なお作法として 「業務効率改善」「効率化と人件費削減」「しかるして市場価値は」 という文脈はよく見る。 全くもって間違っていないし、それが無ければ会話できない(会話してくれない)種族の人もたくさんいるのでぜひ整えて欲しい。 しかし、ここではその後にある「誰もが出くわすちょっとした裏側」の話をしたい。 これは全然勿体つけるような大層なものではなくて、誰もが事業に対して一歩二歩あゆみを進めたら絶対に出くわすのだ。 例えば、BtoBのビジネスをイメージしてみよう。 あるサービス業界をター... Read More >>

誰がオーナーなのかハッキリさせとけよ

技術シーズを元に立ち上げたアーリーステージの会社にありがちなケースとして 「誰がプロジェクト・プロダクトのオーナーなのかが話を聞いててハッキリしない」 という状況によく出くわす。 理想的なのは ・経営判断を行う資質を持ち、かつそれに対して責任を持てる人 ・一番株を持っている人 ・コミットメントが最も高い人 ・業界情報や顧客ニーズに詳しい人 が同一人物であることだ。 ある程度成熟した企業においては必ずしも同一ではないことが多いが、初期の、特にスタートアップにおいてはそれらは同一であることが著しく望ましい。... Read More >>

法人化 :「とりあえず 法人化 」することのメリットについて

アイディアはある。スタートアップを立ち上げるかどうかは悩んでいる。試作をやったり実験はしてみたいと思っている。 そういう状況ならとりあえず 法人化 はするべきだ。 いくつか明確なメリットがあり、デメリットは金がかかることくらいだ。 まず多くの人が誤解してそうなことを正しておこう。 < 登記にほとんど時間はかからない > 具体的な内容は様々なブログポストや地方自治体の説明ページがあるので確認して欲しいが、 – 印鑑作る – 会社名考える – 法人の銀行口座を作る く... Read More >>

独自性がなくても起業しなはれ

昔こんなポスト 小林亜星が「音楽なんてほとんどがパクリ」と言ってたけどそれはある意味で真理なわけで、https://www.clazytech.com/2013/12/95/ を書いたわけだが、「独自性が弱いんで。。。」と起業を諦める言い訳くさい話を聞くことがたまにある。 まぁ大抵はもうちょっと強気なわけで「独自性が弱いように思うんで、どうすれば差別化できますかね!?」と聞かれる。 きちんとそれぞれの事業分野や技術的チャレンジに即してアドバイスをする。基本は – 他社・他人がやらないこ... Read More >>

株式取られんなよ

スタートアップのみに限らず、全ての株式会社の経営者にとって株式比率はとても重要だ。 そんなことは小学生でも知っているが、大事なことは 「出資を受けた時にどう振る舞うべきか」 だ 当然ステージによる。 ステージについて簡単に定義を表明しておくと(学術的なものは専門書に任せる)ざっくり ・シード(まだ市場はよくわからんがコンセプトおれすげぇ!) ・シリーズA(市場ローンチができたかその目の前) ・シリーズB(ローンチはできてるのでスケールさせたい。ビジネス的には国外展開だったり、新規事業の挑戦だったり)... Read More >>

「起業すらならこれは知っておこう」について

カテゴリ「起業すらならこれは知っておこう」について。 これを書こうと思ったきっかけはここしばらく緩やかに存在した。職務上様々な方からビジネス的・技術的なアドバイスを求められることが増えている。 その返答の宛先が大企業であれば私のアドバイスや経験談はあくまで「こんな尖った野蛮な発想もあるらしい」という、ある種珍獣を見るような『良い刺激』で終えて構わないし、むしろ大多数の方にとってはそうであって欲しい。 企業体というものは資本主義社会の象徴のようなもので、そこでは大数の効果が「抑止力」「調整」、時に「忖度... Read More >>

Declarative KnowledgeとImperative Knowledge

たまにMITの講義をedXで聞くのだがalgorithmに関する講義のなかで興味深い話があったのでまとめる。前者のDeclarative Knowledgeが日本語で言えば「お題目」、後者のImperative Knowledgeは具体的な「手順」前者が数式や定義そのもののことを指し、後者がステップ化された命令のこと。前者は何も答えにたどり着く方法を教えてくれない。後者は逆に無機質に方法のみをしっかりと示す。 Imperative knowledgeの代表例がステップ実行のアルゴリズム例えば y * y ... Read More >>

意識低い系のススメ

「意識高い系」というと通常意味するのは、細かいことにいちいちこだわりを持って、ちょっとした小物や使い捨てに近いような道具にでもブランド物やオシャレアイテムを選択し、ハイソな雰囲気のカフェでランチを食べ、自己啓発と教養の向上さらには健康の増進なんかに非常に強い興味と意識の高さを持って自己投資し、かつそれを全く隠そうとしないひとむしろドヤってひけらかしてくるひとのことではないかと思う。 そして恐らくここに自然に付帯するキャラクターとして 『自信満々で順風満帆』 とも言えるのではないかと思う。 私は特にスタート... Read More >>

出資もIPOも無い方が幸せという絶対的事実

スタートアップを立ち上げて、アーリーステージでもっとも苦しめられることが資金調達だろう。やれ「〇〇は☓☓からの第三者割当増資を行い△△億円の資金調達を行いました」とかいうとカッコイイよね。やっぱ。しかし出資なんて受けないほうが良いのだ。「オイオイ、アホか」と思うかもしれないがそれが事実。絶対的事実その1。だ。ポイントはいくつかあるので挙げてみよう。 出資は結婚である。いや、時にもっとエグい 出資を受けることは重婚可能な結婚みたいなものである。 運命共同体と言えばカッコイイが、家族に対する責任も発生すれば... Read More >>

不合理はアリ、不整合はナシ

不合理、不整合、どちらも一般に嫌われるものだが、信頼がおけるかどうかという意味では大違いだ。 不合理のある人間の嫌われ方はこうだろう。 仮に上役なら、理不尽、パワハラ、無理な目標、目的がよくわからない計画、「アイツ偉そうなだけで結局何もわかってないな」 部下や下の立場なら、効率が悪い、上司の指示に沿わない関係ないことばかりやってる、扱いにくい 不整合のある人間の嫌われ方はこうだろう。 口先ばかりで行動が伴わない、「あいつ、時と場所によって言うことコロコロ変わるな」、先週上司が「もっと細かいドキュメントを作... Read More >>

ネイティブスピーカーのみの環境に飛び込め!なんて言われたって

語学習得ビジネスが儲かる理由はひとえに挫折率の高さが故である まず、みんなもっと自分は怠惰で向上心がないということを自覚する必要がある じゃあどうする? 当然、潔くハードルを下げるしかないのだ。 よく『語学習得済み』のひとが言う 「ウダウダ考える前にネイティブスピーカーのみの環境に飛び込め!」 なんて言われたってそれは無理。 度胸という意味で。 あと「経験者は語る」だが『理解度限りなくゼロ』のままその場にいるのはマジで辛い 子供とかわかーい学生とかなら良いけど、社会人としてはマジ辛い。 「そんなの積... Read More >>

看護師の妻の成長 〜賞金付きピッチコンテストには気をつけろ〜

このシリーズで書くのは久しぶりだが、先日「積年の成果」を見たような気がしたので書く。 というのも前段としては、うちの妻は医大の看護学科を出て看護師をやったあとに私と結婚して無理やりアメリカに連れて行かれたという所謂「フツウの元看護師の主婦」である。超安定志向、保守的、田舎安定生活ウェルカム、そんな人間をアメリカまで連れ回して引き回してリスクとリワードの荒波を行くボロ船に無理やり同乗させている罪の意識くらいは私にもある。多少はある。ような気がする。まぁ一応少なからずあるんじゃないかと思う。 ここで言う『フツ... Read More >>

アメリカでリモートワークが多い理由

# この記事は過去の投稿=backNumberです先日「なぜアメリカはリモートワークが多いんですかね?」と聞かれて時間もなかったのであまり良い返答ができなかったなぁと反省し、ここにまとめなおしてみる。 しかし先に言っておくが、その場即答であまり面白い返答ができなかったように、時間をかけて書いても決して面白いことが書けたわけではない。、、、なんてexcuse さて、私が行ってきた場所がシリコンバレーだからというのは多少あるのかもしれないが、LAでスタートアップをやっている友人はメンバー全員リモートワークだと... Read More >>

「SoftBankがARM買収」のニュースをきっかけに「IoTを推進できるひと」を見分ける手段を発見した

#このポストは過去の投稿のback numberです 随分前の話題なのだが、表題の件をきっかけにして以前より探していた解答を手にした気分だ。孫さんありがとう。 SoftBankはその名の通りソフトウェアをバンク=所有して、それを販売していたのが最初の事業だ。 そこからどのように発展していったかはwikipediaにでも細かいことが書いてあるので割愛。 (ここを偉そうにしゃべるほどSoftBankの内情を知らない) ARMは言わずと知れたプロセッサのIP(特許)をライセンス販売している会社で「R&D... Read More >>

動詞は3つだけ覚えとけ。あとは不要

#この投稿はback numberです 動詞なんて3つで生きていける。 動詞は状態を表すものなわけだから、すなわちベクトルを表現できていればあとは大体意味が通じる。 さて、実践的に言えばそれは、 have, take, get だ。 先ほどベクトルと言ったが要するに「動き」と「タイミング」 つまり、まずは大まかに書いてしまうと、 haveは動いていない状態、もしくはかなり前に動きが完了してる時 takeは主語がどっかから取ってくる行動がまさに起きるかまだ起きてないくらいの時 getは主語がどっかから... Read More >>

ちょっと頭良く見せたかったら相槌でprecisely って言っとけば良し

#この投稿はback numberです 複数人で話してるとき会話がよくわかんなくなることは多々ある。マジでよくある。もう4年もアメリカで仕事してるのにそんなことしょっちゅうだ そういう時にもとりあえず相槌打っとけば混ざれてる雰囲気になるじゃない? その具体的方法。まずは超簡単なのは yeah つっとけばいい とりあえず話に混ざってる感じになる I seeとかは確認くさいからちょっと違う で、相手がドヤ顔入れたら really? つっとけば盛り上がる さて、これでは芸がないのでもうひといき行こう 大抵よく使... Read More >>

失敗を恐れるな、むしろとっとと失敗しろ

GoogleのAstro TellerのSXSWでの講演から。 凧を上げて風力発電するプロジェクトについて彼が話しているときに面白いエピソードがあった。 通常の風力発電は設備も金もかかりすぎる。高度が高い方が発電量は増やしやすくなるが、当然相対的に費用が増す。しかしその課題を克服し、試作品がある程度うまく動作したことを彼がラリーペイジに報告すると、ラリーが言ったのが「すぐ同じのを5個作って全部壊すまでテストしろ」だったという。 壊すことで学習スピードは速くなる、という意味合いだ。 これには非常に現実主義的... Read More >>