Q. 電子機器を製品で出すときに法規制ってあるんすか?

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これは非常によく受ける相談で、実は法規制の全体像について体系立てて説明してくれている良いコンテンツはあまり無いように思います。理由は規制は国ごとに異なる上にコロコロ変わるからだと思います。 したがって大抵大きな企業では規格に関して調査する専門の部門が存在していて常に各国の動向にアンテナを伸ばしています。 小さな企業では必要なタイミングで外部のコンサルタントに意見を聞くことが多いです。

さて、ここでは厳密性というよりは極力全体像を捉えることができるように説明したいと思います。最新の情報や詳細は適切な機関から得られる最新情報を元に判断してください。

電子機器を販売する場合の規制というものを理解する上で大変参考になるのが「市場で売られているもの」です。 規制をクリアすると大抵マークが付くもので、そのマークを見ることで規制の全体像が見えてきます。

例えばACアダプタを見てみると、「PSE」「VI」「RoHS」などが書いてあると思います。これらは順に「安全性」「エネルギー効率」「含有物質」の基準をそれぞれクリアしているという意味です。 一次電源(壁から出てるコンセント)に挿す製品と二次電源(USBバスパワーであったりバッテリー)で動くもので規制の内容は異なります。また国によって安全性の試験基準が異なるため機器によっては「UL」や「CCC」など別のマークが付いていることもあります。

次に製品本体、例えばパソコンを見てみると底面や背面に非常に多くのマークや認証番号の記載があることに気がつくと思います。これはパソコンはほとんどの場合でグローバルに販売するため格好のマークを並べるとまぁ大変なことになる、という話です。 全てを列挙することはここでは避けますが、大別すると概ね2種類の規制に基づくマークです。

ひとつは「電磁両立性」です。EMCとも言います。 違法な電波を出してないかというのと、そこら辺を飛んでいる電波を受けても誤動作しないか、という両面で成立していること、という意味で両立性という言葉が使われています。 例えばよく見るFCCマークやCEマーク、また俗に技適マークと呼ばれるものなどはそれにあたります。 電磁両立性に関して網羅的に高い要求が課されている国もあれば、一部を満たすだけで良い国もあります。それぞれの国で規制に微妙な差異はあるものも、それらは大元になるIECの基準を読み解いて解釈した上でそれぞれの国の規格として作られています。(時に丸パクリなことも)

もうひとつはリサイクル系の要求です。 こちらは使っている素材やバッテリー有無などによって細かく異なりますが、きちんとしたガイドラインが提供されているのできちんと調べればあまり問題とはならないと思います。

法規制の相談を受ける際に大抵の方が気になっているのが安全とEMCではないかと思います。 安全については最近の製品は二次電源で動作するものが多く、ACアダプタなり電源ユニットなりのメーカーに規格を通すように要求することしかできないことがほとんどです。対策としては製品開発の序盤では必ず採用部品の候補を複数持っておくことではないかと思います。 一方EMCで気をつけなければならないのはエミッション(出す方)です。エミッションには意図的放射と非意図的放射があり、前者は電波を用いた通信機器のみ関係がありますが、後者はどんな機器でも関係があります。

電子回路が動作すると電流が流れます。その際に発生したノイズが基板内や筐体内で完結せずに外部に出てきてしまうのが非意図的放射です。これはほとんどの機器で発生しています。それこそ非意図的に。 意図的放射は狙った電力を狙った通りに出しているので、仮にNGになった時も対策が容易ですが、非意図的なものについてはそもそも出しているつもりがないので、NGになった時に対策に苦しむことがよくあります。 「これひとつで絶対大丈夫」という万能の策はないのですが、ひとつはできる限り早い段階で一度測定することをお勧めします。

ほとんどの場合でメインのICやその動作速度、内部の通信速度やその頻度、そして配線などの大まかな機構が定まった時点で非意図的放射の程度は概ね決まります。 当然試作品の測定結果で規格を通すわけではありませんが、概ね構成が出来上がって電源が入るようになったら一度測っておくことでリスクの多寡を把握しておくことができます。

このポストの内容は以下の書籍の一部(原文)です。興味のある方はぜひ書籍をお求めください。

幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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