Q. どういうメンバーと一緒に起業するべきか?

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smiling multiracial coworkers with hands together in office

【異論①】

自分の足りないところを埋めてくれるメンバーと起業すべき。自分が技術者であれば、それを売ってこれるやつ。自分がマーケティングが得意であれば、実際にそれを形にしてくれるやつ。チーム総合で穴が無いように初期メンバーを整えるのが良い。

【異論②】

初期はとにかくスピードが大事。そういう意味でもコミュニケーションコストが低いメンバーと組むべき。元会社の同僚や大学の同期、古くからの友人などはそこら辺がツーカーなので上手くいくことが多い。

【異論③】

なんにせよ極力少ない方が良い。手が必要な時は外部の力を借りれば良いのだから。初期アイディアの純粋性の保全のためにはステークホルダーは増やさない方が良い。究極的にはもし自分一人で事業が回るのであればそれが一番良い。

【九頭龍の視点】

どれも正しいのですが、いずれもテクニカルな議論のように思います。「状況に応じて適切な選択肢を取れば良い」というような。 したがって普遍的かつ根本的な正解はここにはないと考えます。

では何が創業メンバー、一蓮托生のメンバーを選ぶ際に大事なのか? 私は事業を共にするメンバーを選ぶ際に最も重視している点があります。

それはFairness(公平性)です。

スタートアップ初期の特徴のひとつは「何かしらのアンバランスさを抱えている」ところだと思います。異論①にあるような理想状態が十分に満たされていない状況がほとんどです。 そのような場合、できることはできる、できないことはできない、この実験結果は成功なのか、失敗なのか、先に進むべきか、戻るべきか、それらをFairに判断し実行する必要があります。

時には苦渋を舐めるような選択肢を自ら取らなければならないこともあります。そういう時に、去勢を張ったり、誤魔化したり、嘘をついたりするような人間とは、スタートアップだけに限らず何事も共にはできません。

また別の特徴として「主観と客観を自ら使いこなさなければならない」という点が挙げられます。スタートアップは小さなチームですので「自分たちで作って自分たちで評価する」という一人二役をこなす必要があります。当たり前ですが自分で作ったプロダクトは大好きです。欠点なんてあるわけがありません。しかしそのまま実際に市場にリリースすれば恐ろしいほどの批判的な意見にさらされます。それを未然に防ぐためには主観と客観を両方とも使い分けて物事を見る必要があります。そういうことができる人にはFairnessが備わっていると思います。

他の項で一人起業・複数人起業について触れましたが、Fairnessの観点で言うと、一人企業はやはり公平性に欠く判断をしてしまいがちです。一人なので容易に思考が偏るからです。したがってきちんとあなたのことを批判してくれる人、あなたが相手を批判してもそれをきちんと受け止めてくれる人、その上で建設的な議論ができる人、そういう人(たち)に囲まれて事業を立ち上げるということは成功率云々を取り上げずとも、悔いのないスタートアップライフの満喫のためには欠かせないファクターであるように思います。

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幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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