共同開発と委託開発の違い

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企業間提携あるいは事業会社とアカデミアの連携をしている中で、共同開発委託開発の境界線が曖昧になる時があります。一方は共同開発のつもりで、もう一方は委託開発のつもりで会話をしていると、いざ契約書、となったところでトラブルに発展します。
あるいはそもそも両者のうちどちらであるのかが曖昧なまま契約を結び、開発の途中でスレ違いが発生し、そのままプロジェクトが空中分解するようなこともあります。

共同開発/委託開発の活用は重要

近年完全な自社開発で事業を構築している会社はとても少ないと思います。また委託開発を発注しているばかりでは資金の問題が発生しますので、ポイントポイントで共同開発を使い分けることは重要な技術戦略のポイントとなるかと思います。

自分の中での整理の意味もあり以下のスライドをまとめてみました。
まずはスライドを一読してみてください。追って補足します。

以下でいくつか私見ですが注意すべきと思われる点について書きます。

特に注意したい点① 共同開発を『とりあえず始めない』

共同開発の場合「お互いの手弁当でまず始めましょう」となる光景をよく見ます。知的財産の取り決めやライセンスフィーの設定が不明確なままです。

事業化できるほどのものにならなければ、お互いが社内で成果発表して終了にできます。しかし、事業化するとなった場合にはお互いの思惑が一気に膨れ上がります。
したがって如何に面倒くさくても事前にきちんと決めておくことが極めて重要です。

そういう意味で一番オススメの形態は
・共同開発プロジェクトで発生した成果物の権利はお互いに帰属する。ただし使用権は両者で持つ
・それぞれのビジネスで発生した利益にはノータッチ
という取り決めがいつでもすぐにできる取り決めです。まぁなかなかそうはいかないのですけどね。

特に注意したい点②『まずハッキリさせる』

共同開発のつもりの人間と委託開発のつもりの人間が入り乱れて会話していると、当たり前ですが極めて噛み合いません。

成果物の権利

委託開発であれば多くのケースで依頼者に移転する(その分の対価を払う)ことになっていますが、共同開発ではほとんどの場合でそれぞれに帰属します。

金銭が発生していないケースは後者でわかりやすいのですが(金もらってないのに成果を渡すお人好しはいない)金銭の支払いが発生している場合は、「その金額に何が含まれているのか?」「何のために払う金なのか?」という意図をきちんと統一して会話する必要があります。

特に注意したい点③『アカデミアの脱皮』

アカデミアは多くの場合で共同研究が基本路線かと思います。
委託ではなく共同であることによって研究方針の決定の自由度を担保するためです。

これは多くの場合で産学連携の障壁となっています。
事業会社はたとえ研究といえども成果を求められます。そしてその成果はあくまで学術的な成果ではなく、実業においての成果です。

事業へのコミット

その際、事業にコミットしてくれないアカデミアとの提携には当然リスクがあります。したがって決裁者が行う判断も保守的な方向に傾かざるを得ません。そうやってアカデミア側の実入りは減ります。
なお『事業にコミットしない』というのは、別にアカデミアが責任感や使命感が欠けているというような話ではありません。アカデミアは学術的貢献を目指す組織です。したがってその思想上、事業的なメリットを上手く共有できない、ということです。
仮に事業会社同士の提携であれば、相互の技術をそれぞれの製品で使うことで儲けを出したり、儲けが出た後で按分するような『利益共有』の仕組みが容易に設定できます。

そのため海外では多くの研究室が大学から飛び出して事業会社を作ります。法人の形態を取ることで事業的なメリットの共有スキームを構築しやすくなるわけです。

しかし大抵は現時点までの研究成果を元に共同実験を行うというところに小さくまとまります。これはこれで意味のあることです。しかし必然的に新規の研究に打ち込むわけではなくドラスティックな成果を目指す枠組みではなく、結果として大きな研究費が動きにくいという問題が生まれます。

如何にしてアカデミアが事業会社に寄り添った共同開発をデザインするかというのは大きな課題です。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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