Q. 価格設定のやり方がさっぱりわかりません

green and orange corella pear fruit lot

製品をリリースする時に必ず決めなければならないのが価格です。

一般に「原価の3倍にしておけば大丈夫」という雑な言い方がされますが、これがなかなか絶妙なもので大抵的を得ています。

まず価格を決める際に考えなければならないことが「ビジネスモデル」と「事業形態」です。

ビジネスモデルは端的に言えば「どうやって儲けるか」です。 製品を売ってそこで利益を取るシンプルなモデルもあれば、製品購入者にサブスクリプションのサービスを提供してそこで儲けるモデルもあります。また製品本体では儲けを取らず、付属品やオプションのサービスで儲けるビジネスモデルも古くからあります。 ビジネスモデルによって、ここで利益を確保しなければならないのか、あるいはギリギリ赤字にならなければ良いかの判断が異なります。 ちなみにAppleは一見するとサービスで儲けるモデルのようにも見えますが、実際は「両方で儲けるモデル」だそうです。そりゃ大きな会社になりますね。

事業形態は会社がどういう会社でどのくらいの人員をどのように抱えていてどのような資産にどのくらい投資してて、という話ですが、これらによって利益に対する考え方は大きく変わります。 経営っぽい言葉で言うと「固定費」と「償却資産」です。

まず大きく立派なオフィスを構えていて、開発部門や営業部門から間接部門までズラッと抱えている大企業の固定費は非常に大きいです。工場や倉庫、その他設備も抱えているだけで管理やメンテナンスで費用はかかり続けます。 また製品をリリースした後は開発部門の経費はあまりかかりませんが、今度は継続的にカスタマーサービスやサポートの費用は計上されることになります。 このような会社では部品の原価だけで製品価格を決めることはできず、背後に存在するコストを適切に算出して原価として乗せていく必要があります。多くの場合で年ごとや四半期ごとで会社なり部門なりで定めた固定値や係数を用いて計算するのが一般的ではないかと思います。

一方、小さな組織で必要最低限の人員しかおらず、ほとんどの仕事を外注化しているような事業形態では原価の算出がより容易かつ正確です。結果として価格と利益の厳密な管理はやりやすいように思います。しかしながらそれぞれの外注先で利益が相応に乗ってきているためそもそもが割高になっている可能性も否めません。

また資産とは設備などだけではなく開発費も含まれます。 開発費に含まれるものとしては購入した物品や試作品、金型費用などわかりやすい出費だけではなく、開発メンバーたちの人件費も按分して積み上げるのがが一般的です。

したがって何年もかけて開発したプロジェクトでは資産の積み上げが大きくなります。その資産は製品リリースとともに一定の年数をかけての償却が始まります。その償却分は会計上は損金にあたるため経営的にはその分を利益で埋める必要があります。この償却金額の多寡は資産の額と償却年数で決まるので一概には言えませんが、意図的に資産計上を小さく見積もったり償却年数を実体よりも長めに取ったりすると価格設定で大きなミスを犯しかねないため注意が必要です。

さて多少複雑なことも書いてしまいましたが、上記などを参考に表計算ソフト等でラフな計算を行ってみると大体部品原価の3倍くらいの価格に設定すると十分な利益が確保できることが多い、というのは非常に面白いところです。

このポストの内容は以下の書籍の一部(原文)です。興味のある方はぜひ書籍をお求めください。

幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする