Q. スタートアップに搾取はある?
スタートアップではよくやりがい搾取という言葉が聞かれます。
事業に十分なやりがいがあったとしても、金が無いスタートアップはそれ相応の賃金を払うことができないので、低賃金で過重労働を課したり、あるいは無報酬で多くの人間に関わってもらったりすることがあります。 私はそれに対してあまり否定的な立場は取りません。
モチベーション
スタートアップに来る方のモチベーションというのは人それぞれですが、多くの人にある程度共通して言えることとしては、既存企業、場合によっては大企業に失望してその埋め合わせをスタートアップに求めてきているということが言えると思います。 例えば先ほどのやりがいだけでなく、勤めている企業の成長性への疑問であったり、勤めている企業内での自分自身のキャリアの成長に対する疑問であったり、そういう憤りを抱えているものです。 しかしながらスタートアップは多くの場合で彼らの不満を埋め合わせてくれる「可能性」があるだけで、実態は伴っていないことの方がほとんどです。
したがってそのつもりがなくても必然的にやりがい搾取と呼ばれるような構図が発生するだけの要素が揃ってしまっています。 ここで、スタートアップに勤める個人の目線に立つと、重要なポイントはあまり長時間にわたってスタートアップに依存しすぎないことではないかと思います。
スタートアップは劇的な成長を目指します。
逆説的に言えば長期的に仮に全く成長していないスタートアップがあったとしたらそれはすでにスタートアップではありません。 その時はきちんと中小企業に勤めているというマインドに切り替えて、先ほどのようなあなたの飢えや不満をこの会社にいたら埋めることができるのかどうか真剣に考え、そして場合によっては離れる選択もあって構わないのではないでしょうか。
このようにきちんとチャレンジとクロージングの管理が適切にできていれば、スタートアップで搾取されたことにはなりません。むしろ多くの金では買えない有益な経験を得ることになるでしょう。
また経営者側の視点に移すと、別の角度の大変気をつけるべき搾取がスタートアップには存在します。
それは株式の搾取です。
私の妻は元看護師なので技術のこともスタートアップのことも何もわからないのですが、門前の小僧のなんとやらで実は結構物事のポイントを捉えている時があります。 以前「スタートアップ〇〇コンテスト!優勝者には◯億円!」というネット動画を私が見ていた時に、後ろから「それって賞金?それとも出資?」とボソッとツッコミを入れていて非常に感心しました。 規約の細かいところを読んだ私は知っています。賞金ではありません。
出資です。
そして株式が最低30%は持っていかれると書いてありました。
どういう関わり方の人が株式を何%持っていくのが適切かという教科書を私は見たことがありません。 しかしながらスタートアップに関わっている人間であればそれぞれ何となしの感覚を持っていて、それはあまり大きくズレることがありません。 その「市場感覚」の外側にいるのがスタートアップを立ち上げたばかりの若者です。いわばカモです。 既に賢明なエンジェルインベスターから出資を受けていたり、経験あるアドバイザーや顧問が関わってくれている状況であればそうではありませんが、例えば「大学院生3人で立ち上げたばかりのAIベンチャー」など、悪意ある大人にとっては騙したい放題です。
そんな詐欺みたいな話、と思うかも知れませんが実際にはうんざりするくらい事例があります。 とはいえスタートアップの出資など基本的に密室で決まるものなので、外部の人間には何が起きていてもわかりません。そして順調に成長しいざIPOになった時に、ツッコミどころ盛り沢山の目論見書が出てくるのです。
解決方法
このような搾取を避ける方法は単純です。周囲に相談することです。 前述のエンジェル投資家やアドバイザーだけでなく、最近出資を受けたスタートアップ経営者、以前受けたセミナーの登壇者、地域のスタートアップ支援センターなど。 あなたがそのアドバイスをきちんと聞き入れるかどうかはわかりませんが、リスクを犯して頑張っている人たちの上前をハネて儲けてやろうと企んでいる人は世の中にはそう多くありません。みな真摯にあなたのことを思って助言をしてくれるはずです。
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