「SoftBankがARM買収」のニュースをきっかけに「IoTを推進できるひと」を見分ける手段を発見した

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#このポストは過去の投稿のback numberです

随分前の話題なのだが、表題の件をきっかけにして以前より探していた解答を手にした気分だ。孫さんありがとう。

SoftBankはその名の通りソフトウェアをバンク=所有して、それを販売していたのが最初の事業だ。 そこからどのように発展していったかはwikipediaにでも細かいことが書いてあるので割愛。 (ここを偉そうにしゃべるほどSoftBankの内情を知らない)

ARMは言わずと知れたプロセッサのIP(特許)をライセンス販売している会社で「R&Dの会社」と言って良い。 実際に自社でシリコンとか作らないし、とにかく新しいアーキテクチャを開発してそのライセンスで稼ぐ。 非常にシンプルかつ技術力が無ければやっていけないビジネスだ。 会社のベースはイギリスで、開発もほとんどがイギリスで行われているらしい。 イギリスは大学と企業の産学連携を政府が随分押しているらしく、 ARMにもケンブリッジの優秀な学生が流れるのが習いだとか。 (ここらへんは内情を知ってるので多少語れる。笑) ARMは特に最近ではスマホへのARM搭載率が随分と高いらしいが 小型マイコンに昔から強くて組み込み系のサブマイコン系はどこもARMが多かった。 センサー系を想定したCortex-M0とM4のコンボとか作ってたりして 非常に痒いところに手を届けようとしてくれている正直ハードウェアエンジニアにとってはとても魅力的な会社だ。

つまりIoTの領域においてARMの影響力はぐっと増すだろうと考えて当時のポンド安の中で買収に踏み切ったという流れなわけだ。 よくまぁこうタイミングをバチッと逃さず買収できるよなぁと感心する。 (買収額3.3兆円のうち1兆円は借り入れらしいし)

さて、ここまで来るとわかるように、得心する部分とハテナマークが出る部分とがあると思う。 これが今回の「見分ける手段」に非常に役に立つのだ。ワクワク。

SoftBankとARMの事業はかけ離れている。 つまりこれまで孫さんがやってきたこととARMがこれからやらなきゃいけないこともかけ離れている。
それは良いことなの?悪いことなの?

まずは一般論でいこう。 だいたい2種類のコメントに分かれる。
「ITではがんばってきたけど半導体は無理だろ。畑が違いすぎる」
「スーパーマン孫さんならやってくれるに違いない、さすが!」
これ多分立場で言うこと決まってしまうのだ。 前者はコテコテのハードウェアエンジニア。後者は経営者もしくはハードウェアもIoTもいずれも門外漢の方。

前者に対する反論はこうだ。 「SoftBankは今までいくつも『業態が違う、無理だ』と言われながらやり遂げてきた」
後者に対する反論はこうだろう。 「ハードウェアがよくわかってないやつがいくら吠えたところで無意味乙」

前者の反論に対する反論は 「つっても失敗例がいくつもあるだろ。ARMはその最大の失敗例になるwww」
後者の反論に対する反論は、、、 「そう言われちゃ議論が成立しねぇだろ引っ込め」

とかまぁそんなやりとりが実際にネット上で繰り広げられたりしていたわけだ。笑
この議論の成否は近い将来ハッキリとわかるものだが、私はその成否に関しては興味がない、冒頭の「見分け」、つまりこれらのどちらに入っているひとも「ある特定の枠」には当てはまらないということに気がついた。

それは「IoTを推進できるひと」だ。

まずITでの成功とハードウェアの話を安易にごっちゃにするひとは、実際IoTやり始めた時にいくつもの絶望的な壁にぶちあたるはずだ。スピード遅い、金かかる、儲かるまでに時間かかる。いずれも憂鬱でストレスフルな話だ。 そして逆にハードウェアでの成功とITソフトウェアでの成功を結びつけてイメージ出来ないひとも「IoT」という言葉を単なるバズワードへと陳腐化させる張本人のひとりだ。
詳しくはこちら。『IoT』『Makers』ー バズワードに翻弄されずに本質を見ようじゃない
そしてIoT製品を開発する中でもっとも強く感じることが ものづくり系のハードウェア経験者とIT系のソフトウェア経験者には価値観や考え方に大きな隔たりがある。 価値観に隔たりがあるということは、成功に至るためのプロセスや成功を勝ち取る手段に対する捉え方にも大きな隔たりがあるということだ。 そしてIoTの領域での成功に至るプロセスや成功を勝ち取る手段はそのどちらに偏っていてもならない。ミックス、しかもその適切な配分量は不明。もしくは全く新たな方法論を構築する必要がある。 つまり、何が正解なのかはほとんどわからないのだ。

だから、発言には気をつける必要がある。
ということを認識していない人はすこぶる甘い、というのが端的に言えばここで伝えたい主旨なのだ。

大抵の場合、解答を誰も知らない問題に対して断定的なことを言う人間は、自己顕示欲が強いか逆張りマーケティング的に注目を集めたいかのどちらかだ。本質を捉えていればいるほど「あ、これはヤバイ話題だ」というアンテナが働く。

例えば『単なるサッカー好き』と『Jのチームの下部組織の監督』で発言が違うのは当り前だろう。
「岡崎まじ最近点獲れてないし、原口とか大迫とかクラブで調子いいやつに変えるべきでしょ」 という発言は恐らく最近色んなところで言われている。 前者のサッカー好きなら「そうだよね!」とか「いや、岡崎も持ち返してきたし原口や大迫はまだまだ経験が足りない」とか好き勝手に周囲のサッカー好きの友人とディスカッションすれば良いだろう。存分にどうぞ。 しかしこれが後者の監督の立場だったとする。別にトップチームじゃなくても構わない。
その手のコメントを監督がしているところを聞いた(読んだ)チームの選手達はどう思うだろうか? 「監督はレギュラーは固定せずに調子いいやつに変えるつもりだ。大会近いのに大丈夫か?」 「監督は前線でのプレッシングはあまり評価してないってことか。。。」 「潰れる動きをやるよりも、とにかく点を獲らなきゃダメなのかな?」 チームに悪影響を及ぼす。
本来チームコンセプトや戦術、哲学は綿密に組み上げて縫製していっているものだが、 このような何かに対するコメントひとつごときで往々にしてあっさり揺らいでしまう。

チームを仕切るような立場のひとでなくてもこのような話は起こると思う。 同僚からの不信感、上司からの評価低下、とかく不確定な事柄に対する発言というのはセンシティブだ。

なのでIoTに全く関係のないひとが好き勝手にあーだこーだ言っていたのは「あー賑わってるなぁ」くらいのものなのだが、IoTに関わりのあるひと、特にこれからプロダクトを作ろうとしている人が『独自の視点』や『確固たる信念』を伴わずに安易な発言をしているケースでは、「見分け」させていただくことになりましたねぇ。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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