Q.トップダウンの適切な使い方とは?

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ここで告白しますが、私は「トップダウン過ぎる」とメンバーから言われたことがあります。

一度ではありません。何度か。
毎度、とまでは言いませんが。

リーダーになったとき、誰しも「共和的リーダーシップ」を発揮したいと思うものです。
信頼できるメンバー、意義のある目標、周囲の期待が揃えばなおのこと。 みんなで協調して、問題点は常に話し合い、納得して進んでいく。職場はハッピーでメンバーは皆仲が良い。そんな情景を誰もが求めています。

ところが、どこか「足りないもの」に気づく時があります。

「推進力」です。

実りある建設的な議論。
妥当な開発スケジュール。
無理のない予算計画。
適切なマイルストーンに適切な協力者。
適切な技術と適切な労働環境。

「(・・・果たしてこれで勝てるんだろうか?)」

スタートアップはほとんどの場合で無茶のある目標を目指しています。
例えばそれは「指数関数的な売上げ成長」であったり「2年で市場を制覇する」ことであったり
「〇〇市場に革命をもたらす」ことであったり。

適切なことを適切なだけ適切に積み上げて、妥当で普通なことをしたい人はスタートアップはやめておいた方が良いかも知れません。一種の狂気が必要な時があるのです。
1の計画を1.2にし、1年で終わるものを10ヶ月で終わらせて、もし失敗した時は即死(倒産)を覚悟する。
そのくらいの不退転の貪欲さを発揮する必要があるのです。

そんな共通認識を持たせることは可能でしょうか。

自然発生的にそんなものが出てくるでしょうか。

私はそれは無理なことだと考えています。

適切で妥当なことは話し合いによって導くことができます。
優秀なメンバーが揃っていれば時間をかければ必ず正しい答えに辿り着くことができます。
しかし「概ね正しい方向なのだけどちょっと正しくはない答え」に共和的な議論で辿り着く方法を私は知りません。

したがってそれが必要だと判断した時にトップダウンを使います。

ほとんどの場合で誰にも感謝などされません。
大抵はチームが乱れます。
加えて最終的に失敗した時のリスクは極めて大きいです。
それでも使います。
理由はやるべき時にやるべきことをやらずにあとで後悔がしたくないだけです。

スタートアップにとって最悪な結果とは、競争に敗れて倒産することではなく、チャレンジすることなくチャレンジした場合の結果を知ることのないままダラダラと生き延びることだと私は思います。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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