Q. 創業した会社はどこから自分のものではなくなるのか

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この質問への回答については、色々な考え方の人がいるように思います。

①CEOを降りた時
②持ち株比率で拒否権(3分の1)を失った時
③持ち株比率で過半数を失った時
④持ち株比率で3分の2(絶対的な支配権)を失った時

などが挙がるのではないでしょうか。 テクニカルには④のあたりで自分勝手が通らなくなるので(第三者が重要案件に対して拒否権を発動する可能性があるので)株主全体の折り合いをつけることをある程度考えなければならなくなるという意味で面倒が増え、実質的には支配が完全なものではなくなるため「完全に自分がコントロールできているわけではなくなった」と言うことができます。

しかしながら私の知る限りでは3分の2を神経質に気にしているスタートアップ創業者はあまりいないです。それは「いやいや、過半数あれば取締役の専任なども含めた実質的な支配は可能だから」というようなこれまたテクニカルな理由ではなく、実際のところは拒否権についてもあまり気にしている人は多くないように思います。 理由でもありません。特にエクイティファンディングを中心に事業を成長させてきた人にとっては、細かい持ち株比率のことよりもしっかり調達してしっかり成長させることの方が遥かに大事であって、それができている限りは自分はCEOであり続けることができる、と考えています。そしてそれは概ね正しいです。 したがって①を自分の会社ではなくなるタイミングとして捉えている方が多いように思います。

しかしこれも起業家の一面でしかありません。
ここで、他の考え方、選択肢を追加します。

⑤最初のエクイティ出資を受けた時
⑥自分以外のステークホルダーが加わった時

私はどちらかというと⑤ or ⑥に近い考えを持っています。
冒頭の従業員の的確な暴言(笑)に戻りますが、この発言をしている彼(彼女)は生株も保有していないいち社員かも知れませんね。取締役でも執行役員でもなく、場合によってはジュニアレベルのエンジニアかも知れません。

しかし彼はステークホルダーです。「運命共同体」という意味での。

「彼は所詮いち社員だから」という考え方はとても危険です。「事業に深く入り過ぎるエンジェル投資家」と起業家の対比で述べたことが別の形で成り立ちます。 会社と従業員は雇用契約という契約関係にあります。これは彼らの時間なり労力なりの対価として会社側は金銭及び福利厚生を提供するという契約です。これは両者が金と時間を持ち寄って交換した、と簡略化して言うことができます。

さて、両者にとって金と時間は? というと、実はこのケースでは、どちらにとっても「僅かな持てる物のうちから出した」に違いありません。 これが共同体でなくて何なのでしょうか。とてもフェアな関係性です。両者が「事業」に可能性を見出し、成長し、収穫を共にするために集まったのです。

さて、会社って誰のものでしょうか?

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幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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