Q. 賢そうな人間になる必要はあるか?
こちらはお分かりの通り、質問ではなく、私からのメッセージです。 ぜひ読者の皆さんは「賢そうな人間」は目指さないで下さい。むしろバカになってください。
私がよく知っている範囲で「賢そうな人間」がぶち当たる典型的な壁のひとつが「本当に賢くない人の無理解」です。 賢そうな人は得てして正面突破を狙ってしまいます。あなたの脳裏で展開される明確なロジックを相手に理解させることが可能だと考えるのです。 それは徒労に終わります。 そして挫けます。
そうならないためにバカになって下さい。 困ったなぁと頭を抱えて色々な人に相談しちゃって下さい。たまにうっかり偉い人にも他部署の人にも他社の人にも相談しちゃって下さい。 突破できない壁は突破しなくても良いのです。 当然それによってどこかに歪みが生じて「損した」と感じることもあるかも知れません(例えば出世が遅れるとか)。 そこもバカになって乗り越えて下さい。 最終的にあなたの周りに人が集まって、やりたいプロジェクトが実現できて、そして結果が出れば、それを評価しないことは流石に誰にもできません。
起業についても難しく考える必要はありません。 もしあなたが起業を志して毎日うんうんと頭を抱えているのであれば、すぐにそれをやめてプラプラしましょう。友人と飲みにいって、家族と週末のアクティビティに出かけて、静かにカフェで本でも読んでみましょう。 何故なら物事はもっとシンプルだからです。 例えばあなたの周りに何かを欲しがっている人がいた時に、それをたまたま自分が持っていたり自分であれば手に入るものだったとします。それをタダでやってあげた場合は「ボランティア」ですし、それをあなたが今所属している会社でやれるならそれは「仕事」ですし、自分の会社を作ってそれをやるならばそれは「起業」です。 同じようなものを欲しがっている人というのは探せば大抵それなりの人数いるわけで、そこにきちんと供給できればそれで十分ビジネスになります。とてもシンプルな話です。
このような発想でできた会社は実は沢山あります。例えばジャックドーシーがSquareを創業したきっかけは友人のガラス職人が個人宅のガラスを修理する現場にたまたまついて行った時に、お客さんが現金を持っていなくてその場で代金をもらえない、というシーンに出くわしたからだそうです。友人に聞くとそのようなケースはとても多くて、後日振り込みをお願いするとやはり取りっぱぐれることがあるのでとても困っている、と。遠隔でクレジットカード決済ができる仕組みというのは当時もありましたが酷く高額でした。「これがスマートフォンでできれば便利なのに」と発想し、Squareが生まれました。
「賢そう」であることは実用上は「正しそう」とほぼ同義ではないかと思います。 物事に対して適切な正解を毎度持ってきてくれそう、これが「賢そうさ」ではないでしょうか。
ほとんどのシーンでこんなものは何の役に立ちません。
スタートアップの初期のメンバーは様々な形で創業者と「人間的繋がり」があることが極めて多いです。 古くからの友人関係であったり、イベントで知り合って仲良くなった間柄であったり。 試しに「あなたは創業者のどこに惚れていますか?」と聞いてみると、その時に「あの人は超賢いから」という答えを得るケースはそれなりにあります。 しかし実際その創業者の周囲からの印象はというと「めちゃくちゃフランクだけどお気楽そう」とか「極度のオタクで気難しそう」とか「言ってることの半分はよくわからない妄想家」とか、水が漏れる穴が2つも3つも空いてそうな表現であることが非常に多いです。
つまり「あの人は超賢いから」本当の意味は「あの人は”実は”超賢いから」なのです。
賢いかどうかなど身近な人が知っている情報で構わないということです。それよりも印象は別の人間味が溢れるファクターであった方がより多くの人を惹きつけることができるはずです。
ちなみに前述のジャックドーシーの若い頃の目標はCamper(スペインの有名な靴ブランド)の店員になることだったのですがそれが叶わずTwitterの共同創業者たちと同じ会社で働くことになったといいます。
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