Q. 十分な規模がある市場にアプローチすべきか?

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好きにして構いません。
というのも二つの視点があります。

ひとつ、今みんなが十分に大きいと思っている市場が仮に10年後にそのまま大きい市場なのかどうか誰も答えを知りません。
ふたつ、マネーではなくバリューで物事を考えるのが良いと思います。

前者は圧倒的な事実です。誰も先のことは知りません。 最近で言えば、あっという間に当たり前になったAIや自動運転。10年前ならまだしも20年前に本腰を入れていた人がどれだけいたでしょうか?恐らく一部の専門家以外は誰も見向きもしなかったはずです。その時期にこれらの領域に懲りずにアプローチしていた人は、近年いわゆる先行者優位を得ているはずです。

逆にWindowsが出てくる前を思い出すと、誰もワープロが無くなるなんて思ってなかったでしょうね。事実ワープロの販売台数は1990年をピークに約10年で完全に滅びてしまいました。(2002年に最後の生き残りだったシャープが生産終了) 正確な先読みができる人などいませんし、今をベースに未来を想定するのは如何にも無邪気過ぎます。

後者について。これは非常に大事なことです。 市場規模は大事です。稼がなければ社員を養うこともオフィスを拡張することも新規の研究開発をすることもできませんので。 しかしながら市場規模で参入如何を決めるのはいかにも安直ですし、とても大事な何かを忘れています。

それがバリューです。

例えばあなたが寝起きに朝のニュースを見ながらぽちぽちと1時間FXをして1000円勝ったとします。果たしてそれは世の中に何かバリューを生んでいると胸を張って言えるでしょうか。一方、その後朝食を食べて歯を磨いて着替えてバイトに行き、コンビニで時給1000円で1時間働いたとします。その時、こちらは明らかに世の中にバリューを生んでいると言えます。

使うことでも、得ることでも世の中にバリューを生み出すことはできます。マネーはそのための道具に過ぎません。本当に求めるべきものはバリュー、すなわち他者に与える何らかの貢献です。

私はキャリアの関係上、楽器市場についてそれなりに知っています。 市場規模はさほどではなく、超大手企業が新規参入することはほとんど考えられません。とはいえ連結で社員数万人が食べていける程度ではあります。安定市場で大きく下がることも上がることもない面白みに欠けた市場です。私が投資家なら入れません。しかし、多くのバリューを生み出している業態だと強く思わされることが何度もありました。

私がファーストキャリアで所属していたヤマハ株式会社は「感動をともに創る」がスローガンでした。「感動」なんていうきれいごとでは決して腹は膨れないのですが、バリューに目を向けた良いスローガンだったと今更ながら思います。

市場のことを全く考えるなとは言いませんが、それよりもあなたが社会に与えたいバリューについて考えることにより多くの時間を割くことをお勧めします。

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幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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