Q. リファラル採用を最も信用しているのだがそれで合ってるか?

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なお「リファラル採用」とは誰か所属メンバーの紹介による採用のことです。大抵は以前の職場の同僚や大学の同窓生などを紹介してくるパターンが多いかと思います。

【肯定的異論】

採用で最も注意すべきはスキルマッチとカルチャーフィットだ。 リファラルの場合は、対象者のスキルと普段の振る舞いの両方をよく知っている人間が内部にいるということだからリスクは非常に低いと考えられる。

【否定的異論】

社内政治というものは極力排除すべきだ。リファラル採用された者は当然ながらその紹介者との結びつきが強く、例えばCTOのリファラルで入ったエンジニアが、CTOとCEOが衝突したシーンでどちらの肩を持つかなど明白だ。 社内に派閥が生まれるリスクを避ける意味で、極力ニュートラルな人員を採用すべき。

【九頭龍の見解】

特に多くのスタートアップにおいてスピードを重視する必要があります。スピードを上げるためにはコミュニケーションコストを下げる必要があり、その際にコンテキストの一致はとても役に立ちます。 リファラル採用の中でも「前職の同僚」のパターンはコンテキストの一致が高い確率で見られ、これは開発のスムーズな進行を助けることに繋がりとても有効です。

逆に大きな企業の場合、リファラル採用が不幸な働きをするケースがたまにあります。それはある程度の規模の企業においては人事による配置や組織転換が概ね末端メンバーの理解や意図の外で行われ、結果としてリファラルの経緯など無視されることが多いからです。 「(あいつは〇〇の仕事だって言ってたのに、、、ていうかあいつももう別の部署だけど)」 というようなことが起きた際にモチベーションの維持は少々難しいことになるかも知れません。当然適応性の高い人は新しい環境で新しいモチベーションを見つけてくれるので、これが必ずしもリファラルを思いとどまる理由にはなりません。

私個人的にはリファラル採用を信用し重宝しています。しかしながらそこには「リファレンスした人間が採用された人間の責任を取れ」というシビアな考えがベースにあります。

例えば、アメリカでは突然見知らぬ番号から電話がかかってくることがたまにありました。相手は人材紹介会社だったりどこかの企業のHR(Human Resource=人事部)だったりします。
「〇〇さんと2年前に一緒に働いていたと聞いていますが、彼・彼女について教えてください」
これがリファレンスというやつです。

どこかに企業の募集に応募した際にほぼ必ずリファレンスを取らせてくれと言われます。そうすると元同僚が「Kuzに聞いてくれ」と私を指名してくることがあるわけです。極力近い距離で仕事をしたことがあり、かつ自分に不利なことは言わなそうなやつを選択してくるわけですね。話では何人か挙げたうちから紹介会社なりHRなりが2, 3人に絞って電話するのが一般的らしいです。

私は最初は「日本人的に」とりあえず褒めちぎっていたのですが、同僚たちとそういう体験について話すうちに少しずつ考えが変わってきました。 「(あ、これはきちんと答えないと自分の評判に跳ね返る可能性があるんだ)」と。 確か当時のボスのJがそういう意図のことをそっけなく言ってくれたように記憶しています。 それからは本当にありのままを答えるようにしました。むしろ良いところと悪いところのバランスを整えて両面あるということがきちんと伝わるように心がけました。

日本ではこのようなリファレンスの取り方はあまり経験がありませんが、リファラル採用はある意味同様の論理が適用できるパターンのひとつです。 リファラルで採用した人間の働きは、リファレンスした人間の評判に跳ね返ります。ポジティブな話なら良いですが、それだけとは限りません。

採用した人間が実は十分に機能しなかったり、他のメンバーとトラブルを起こしたり。その悪印象も飛び火します。それが嫌なら周囲がマズいと感じる前にその人間が状況改善に働きかけるべきです。
リファラル採用は良いやり方なのですが、有効に機能させるためにはある種のスキームをきちんと整えておくべきだと考えられます。

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幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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