Q.「平等なチーム」はあり得ない?

最終更新日

あり得ます。 しかし、状況によっては「平等なチーム」は明らかに好ましくないと言えます。

例えばそのひとつが初期のスタートアップです。

平等なチームのイメージを簡単にまとめると、
・チーム全員で決める
・チーム全員で行う
・チーム全員で助け合う
少々抽象的ではありますがこういうことではないかと思います。

初期のスタートアップにとってはまず「全員で決める」が極めて困難だと言えます。
例えば初期のチームメンバーが5人で、CEO, CTO, CTOの元部下のエンジニアがベテラン1人と若手1人の計2名, ジュニアな営業マーケティング担当が1人だったとします。3人でプロダクトを作って2人で売り込みに行きつつ資金調達に動くようなよくありそうな構成です。
プロトタイプを作っている途中である技術的困難が判明し、今までクライアントに営業文句として言ってきたスペックを変更しなければならないとします。「解消するまで営業は止めるか?」「スペック変更して営業を仕切り直すか?」この判断をチームで決めなければならない状況です。
CTOはスペック変更の必要性を完全に間違いないと考えています。
ベテランエンジニアはCTOと同意見ですが、若手は別の手を試してみる甲斐はあるのではないかと考えています。
しかしエンジニア3人の話では一旦押し切られて「スペック変更やむなし」の態度で話し合いには臨んでいます。
営業担当は今までの苦労が台無しになることに憤慨していますが技術的制約については何度説明を受けても正直よくわかりません。
CEOは非エンジニアですが業界には精通していて、似たような状況にはこれまで何度も出くわしたなぁさてはて、と思っています。

さてここまでで既にメンバーの認識や想いはバラバラです。
営業担当は理由はよくわからないけどマジで勘弁してくれと主張します。
CTOはそうはいってもどうにもならないものはならないと言い、CEOの「改修にはどのくらいかかる?」との質問に「どれだけポジティブに考えても1ヶ月。場合によっては解決の目処が立たないかも知れない」と答えます。
若手エンジニアは「例の手」をもう一度蒸し返すのはどうなんだろうか、と思っていたものも折角CEOもいる場なのだから、と再度提案し技術的な説明をその場で付け加えます。
ベテランエンジニアは「無理だ」とバッサリ。
CTOは「可能かも知れないがうちにそれができるエンジニアがいるとは思えない」と一歩引いた反応。
しかし営業担当は「可能性があるなら試しましょうよ」と強気の発言をします。

さて、まとまるか!?

もし時間に余裕がある状況だった場合は「期限を決めてA案、B案、C案を試してみて、どれも効果が出なかった場合は諦めてスペック変更の方向でいこう。その間、クライアントには待ってもらえるよう営業から働きかけよう」というような判断があるかも知れません。

しかしスタートアップにそんな時間はないし、今の顧客を掴まなければもう次のチャンスはないかも知れません。

今すぐの判断が必要。

そんな時は創業者CEOがいればその人が決めるのがベストでしょう。 初期のスタートアップにおいては過半数以上の株式を持っている創業者CEOがいることが極めて多いと思います。場合によっては会社の創業資金はほぼ完全にその人が出しているというケースも多いのではないでしょうか。

「彼に決めてもらう。彼の会社なんだから」

なんてセリフもよく聞きます。特有の状況ではありますが、この状況では「平等」にこだわることは何ももたらしません。いたずらに判断スピードを遅くし、場合によってはそれによって死を招きます。

しかし一人で判断するというのは如何にも危なっかしい側面があります。 「一君万民」とは旧日本軍の思想で「トップ以外はみんな平等だ」という考え方です。一時的には判断が明確で、統率が取れ、成果を出すことがありますが、その末路は歴史が語ってくれています。 そのため複数の共同創業者がいることが好ましいと一般には考えられています。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

シェアする