Q. 起業家ってみんなスーパーマン？

技術力があってその筋で知られていて、かつ経営手腕があり、カリスマ性も、人を惹きつける能力も、、、こりゃスーパーマンですか！？

って私はどちらかいうと逆向きの意見を持っています。 上手くいく経営者・起業家、というのは一概には言えませんが、「打率が高いように見える経営者の種類」で言うと、いわゆる「憎めないダメ人間」のパターンが非常に多いです（周囲にもね） これは本人にはとても言えないことで。というのも本人はそんなつもりないことがほとんどだからです。

外向きには起業家というものについてやはりメディアによる巧みなバイアスが働いていると感じます。 これは当然のことというか、そうでなければ盛り上がりませんので。 もしシリアルアントレプレナーで様々な思い切った事業を立ち上げる傑物が、品行方正で周囲の意見をよく聞き、強靭なリーダーシップというより民主的に社員の意見を元に経営するようなスタイルだったとしたら、何もドラマが生まれませんよね。 それよりも、ライバルとの対決、社内のクーデター、プライベートのゴシップ、窮地での大逆転、みたいな話が続かないと、読者はすぐ飽きてしまいます。

まぁ要するにかなりの部分が捏造か誇張だということです。

さて、実態について語る時間です。 起業家のタイプにはいくつかのカテゴリーがあります。 例えば古い本ですがCollins & Lazierによる著書 “ Beyond Entrepreneurship”におけるLeadership styleの定義には

1. Authenticity（信頼性）
2. Decisiveness（決断力）
3. Focus（フォーカスする力）
4. Personal Touch（人間関係の構築力）
5. Hard/Soft People Skills（メンバーに充実を感じさせながら酷使する力）
6. Communication（語る力）
7. Ever Forward（とにかく前に進める推進力）

とあります。これら単一ではなく複数のスタイルを持ち、かつ使い分けるのが優秀なリーダーであると。
これは起業家に限らず、例えば身近なリーダーを思い浮かべてみると「いいリーダーだ」と思える人は大抵この中のいくつか、場合によってはほとんどを持ち合わせているのではないでしょうか。逆に周囲から「いいリーダーだ」と思われながら上記に当てはまるところの少ない人というのはいないのではないかとすら思います。

さて、いくつか、と考えた時に例えば “Focus”, “Communication”, “Ever Forward”だけを持っている人を考えてみましょう。 とにかくやるべきことを定めてそこに向かって進むことに熱心で、それを周囲に語るのが上手い人。

結構な詐欺師でしょう。笑

しかし、これが「Greatではないけど上手くいく人」のパターンのように私は思います。（色々見てて） ポイントは、周囲はそこが弱いとわかれば助けることができるポイントが多い、ということです。例えば決断であれば、周囲が有用な情報を集めて相談相手になることで決断力を補完することは可能です。人間関係が苦手なリーダーであっても、チームメンバーがしっかりと相互に関係性を築くことができていればそこに破綻が現れることは少ないように思います。Communicationが上手にできていれば、多少メンバーへの差配が雑だとしてもそれこそメンバー同士で支え合い高め合うことに無理はないはずです。

しかし、リーダーが推進力を持たなかったり、ビジョンや戦略を語ってチームに浸透させようとしないとき、周囲はなかなか困った状況に陥ります。そして、言って嬉しいことではありませんが、チームが分裂することがよくあります。誰かがチーム内で別のリーダーシップを発揮し始めるということです。これはもはや事業が上手くいくかどうか以前の話ですよね。

周囲のサポートを存分に受け、それに感謝し、何度つまずこうと挫けず懲りずに前へ前へと進む人間。 そんな人間をサポートすることに多くの人は意義を感じ、充実を感じるのだと思います。そうやってスタートアップは成立しているという側面があるのです。

以上は私が日本からシリコンバレーに行って結構早めに気づいた衝撃的な事実でした。 なぜなら日本にいた頃の私は「技術力があって」「賢いこと」がスタートアップの絶対的な成功条件だと思い込んでいたからね。

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