Q. 学位がある人間は起業の際に有利になるか?

newly graduated people wearing black academy gowns throwing hats up in the air

この質問については「べき論」の話と「実態」の話とかがあるように思います。

まず「べき論」の話。

学位の有無は本質的な問題ではありません。私はシリコンバレーにいた時に何人ものエンジニアと知り合いになりました。そしてたまに「こいつはすげぇな」と思うやつに出会った時その多くがComputer Scienceの学位を持っていないことにも驚きました。何故なのか理由を聞いてみても「その頃は〇〇になりたかった」とか「なんかピンと来るクラスがなくて」とか「お前らもっと将来について真剣に考えろよ!」というような程度の話でしかありませんでした。 しかしながら彼らは完全な「ソフトウェアオタク」で、それこそ日曜は目覚めてから寝るまでコーディングしているような輩です。全てを捧げてると言っても過言ではありません。でもたまたま学位は持っていないのです。 と、このように技術力と学位は必ずしもイコールではありません。それは皆さんも半ば経験則的に知っていることなのではないでしょうか。

続けて「実態」の話。

例えばあなたの会社が順調に成長してForbsの「来年ブレイクするスタートアップ(仮題)」に取り上げられるとします。仮にあなたの学位が事業とさっぱり関係ないとして、インタビューアーはあなたの経歴を聞いて「(そうかぁ、学位と事業がつながらないなぁ。。うーん)」と思うでしょうね。きっと。「(それであったら何か別の学位を取ったことに面白いエピソードがあるのでは?)」と構えて聞いても、そこには良いネタになりそうな話は降ってきません(上述のとおり)。あなたの経歴はメディア映えしないわけです。できればスタンフォードでCSでPhD取った後にMBA出て欲しかった、と思われているかどうかは知りませんが。笑

また、例えばあなたの会社が資金調達をするとしましょう。事業は仮にAI関連のエッジデバイスを開発しているとします。海外のベンチャーキャピタルに対して繋がることができて、彼らのデューデリジェンスの対象になるかどうかのところまできたとします。 その時、たまたま同じようなアイディアで、同じようなステージで、同じくらいの資金調達を目指している他の会社がたまたま同時に彼らの前に現れたとします。相手は中国のスタートアップでCEOは精華大学のコンピュータサイエンスで博士号、メンバーも北京大学、中国科学技術大学、ニューヨーク大学やMITへの留学経験を持つというそうそうたる学歴の持ち主たちです。対するあなたたちは日本の中堅大学の電気電子工学や化学の出身者たちです。 VCにはどう映るでしょうか?勝ち目なし? しかしあなたたちは実は某大手開発会社の同期メンバーで最新のIoT機器や通信デバイスを開発する部門で5年以上の実務経験を持っているとします。 VCにはどう映るでしょうか? あなたたちのプロトタイプはすでにほぼ出来上がっていて、事業計画では来年度には黒字達成見込み、それもさほど無理のない計画です。 どう映るでしょうか、、、

そろそろイーブン、かな。このくらいあってイーブン。

誤解のないように言っておくと、VCの方々はとても聡明で真面目です。もはや滅亡した昭和の採用面接のテンプレのごとくに履歴書ばかり見てあーだこーだ言うことなんてありません。しかし、VCというのは数百件の候補の中から1社を選んで投資する作業を延々と繰り返しています。つまり「まぁとりあえずここ良さそうだしいいんじゃね」というノリでは入れません。全てを万全に、隙なく、確固たる勝算をもって、念入りに念入りに、投資決定するわけです。 その時に学位は、当然見ますよね。そりゃ見ますよ。 当然学位だけではなくその人の研究成果だとか書いた論文だとかも見ます。そうやって総合的判断を下すわけです。 その「総合的判断」において学位が一定の比率を持つのは間違いありません。

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幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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