Q. 起業に適正年齢はあるか?
「適正年齢なんてない!」という答えを期待されていたらすみません。あります。
それは「30代後半以降」です。
当然おおよその目安であって「35歳は入るのか?」「33歳だとダメなのか?」とかそういう話ではありません。繰り返しになりますが、あくまである程度の抽象度を含んだ目安の話です。
なぜ30代後半(目安)か?
それは起業後にぶつかる困難をいくつか想定するとよくわかります。 当然起業後に幸運ながら以下に示すような困難にぶち当たらない人はいますし、また他のメンバーや役員、株主、その他ステークホルダーのサポートでその危機を乗り越えることができる人もいます。なのであくまで「自力で乗り越えるとしたら」というように理解して下さい。
【困難1】知見者を見つける必要がある
起業する際に初期メンバーが事業に必要なこと全てに対して通じている確率はかなり低いです。そうすると必ず穴が開きます。 「勝手がわからないから効率が悪い」「誰かに教えてもらえばそれでスッキリ片付くのだけど誰も知らない」というような話はとにかくその手の専門家をつかまえて手伝ってもらってしまうのが早いです。 しかしその知見者は恐らくスペシャルな経験や知識を持った方で、おいそれと簡単にアクセスできない、あるいはどこにいるのかすら見当がつかないことの方が多いのではないでしょうか? 何かしらの領域でビジネス経験をひと回しした人間は、当然人脈も持っていますし、人脈が無い領域への入り方も知っています。知り方を知っている人にとっては知っていないことも知っていると同然なのです。
【困難2】海千山千どもも有象無象どももわんさか沸いてくる
ある程度事業が動き始めると、あるいは資金調達のニュースなどが流れたりすると、あなたはあっという間に周囲に取り囲まれます。やれこういうコラボはどうか、やれうちのこの製品を使ってみないか、やれ次の資金調達の予定はどうなのか、助成金取りますか金借りますか、と。彼らは海千山千の猛者どもです。彼らの狙い、強み、弱み、こいつは切らなければヤバい、こいつとはゆるゆる付き合おう、そんな判断を適宜していく必要が出てきます。特にステークホルダーにもなるようなパートナーの選び方は、なかなかロジックでは説明しきれません。足切りは基準はある程度論理的に説明可能と思いますが、いよいよの二択などは極めて直感に近いものがあります。 すでに何度かこの二択で失敗したり成功したりを経験した人間は、その直感が明らかに優れてくるものだと自身の経験から確信を持っています。
【困難3】お前ら事業のことだけを考えろよ
組織ができてくると、必然足並みが乱れるシーンを目にすることになります。リーダーシップが試される時です。しかしながらリーダーシップというのは天性か技能かというと技能だと私は思います。カリスマ的なリーダーシップを持っている人は尊敬に値しますが大抵の人には手に入らないので諦めるべきです。技能=テクニックだとしたらそれはきちんと勉強して身につける必要があります。実際に試運転してフィードバックを得る必要もあるでしょう。それを何度か繰り返して技能というのは習得するものです。また必要とされるリーダーシップは時によって異なります。ということはあなたは複数の技能を身につけておく必要があるということです。 テクノロジーと資金とビジョンがあれば会社は動く?そんなのは幻想です。日々のくだらなくて仕方がない話題をきちんと適切な技能を用いて処理していかなければスタートアップという車は運転できません。そこを自動運転に任せてるときっと痛い目をみます。
さて、挙げ出すとキリがないのですが、上記のいくつかの事例でわかるように、要するに私が「30代後半」で言いたいことは「一周回し終わった経験」です。そこには「過去にやらかした失敗」や「自分なりの引き出し」がすでにいくつか備わっています。 起業は非常に疲れるアクティビティです。それをやりながらも柔軟に学びを積み重ねることができる人は本当に尊敬します。しかしながら大半のひとにとっては「万全を期しての総決算」ではないでしょうか。特に日本のような失敗に対して受容性の低い社会においてはなおさらです。 そうすると手持ちのカードは多ければ多いほど良い。しかし、先ほど言ったようにとても疲れる作業です。ですので当然極力若いうちの方が良い。
ということで相互のバランスの良い年代をあえて選ぶとしたらそれは「30代後半」だろうと私は思うのです。
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