Q. 社内ミーティングで取るべきポジションとは?

selective focus photography of monk during meditation

古くからの友人Sの父親が大学教授なのですが、お父さんはSに大学内の権力争いの厳しさを伝えるとともに 「最初にしゃべったやつが負け」だと教えたそうです。

なかなかユニークなメッセージですが、一定の共感を示すことができます。 私なら少々アレンジして 「たくさんしゃべったやつが負け」 と言いますかね。

そもそもなぜ「最初にしゃべったやつが負け」かというと、よくある議論の綱引きは「印象で優劣が決まる部分がどうしても強い」ということです。これは前述したピークエンドの法則などにもあるように、どうしても人間には、議論で一個一個積み上げた詳細な論理よりも、ど盛り上がったところと最後のまとめの印象に「正しさ」を左右されてしまう、という哀しい習性があります。

つまり「勝ち負け」を優先する際は揚げ足を取られないことが最重要で、そのためにはまずは相手にしゃべらせることです。そして相手の言を批判したり矛盾を指摘することでまずは議論全体の流れで優位に立ち(ピークを作り)、その後に自らの主張や提案を通していく(エンドを作る)のが定石だ、という意味でしょうね。

さて、実際に表題の「社内ミーティング」に立ち返ると、恐らくそこまで露骨なポジション争いばかりではないことでしょう。 そうするとむしろ必要なことは「ポジション争いが発生するのを防いでフェアな議論に導く」ことです。

チームにはディスカッションが上手いメンバーと下手なメンバーがいると思います。 ディスカッションが非常に上手いメンバーというのは意図してか意図せずか上記のようなテクニックを独自にアレンジして用いていることがあります。いわゆる言論の誘導のようなことをします。場の空気のコントロールといっても良いと思います。 「空気を読む」とは感情移入に基づく臨在感的把握だと言えます。つまり無いものを在ると理解してそれを把握しようとする行為です。会社の運営、プロジェクトの進行をそんな曖昧なものに委ねることはできません。

したがってやるべきことは、それらを断ち切ることです。

流されそうな空気が生まれたら、あるいは誰かが生み出そうとしていたらそれを断ち切る。 十分な議論がされないまま結論が先走るようであれば、的確かつ本質的な質問を投げかける。 誰かのミスによって、そのミスとはほぼ無関係な全ての論理が否定されそうな空気が生まれていたら、改めて評価できる点を適切にピックアップして議論のテーブルに乗せ直す。 怒りや焦りをベースに短絡的な判断を起こしそうになっていたら、一度場を和らげて時間が取れるように仕向ける。

非常にレベルが高い行為だと感じたと思います。
これらをこなすためには、全体の意見を聞き、きちんとした事実とただの印象論を分離し、かつ的確に観察整理した上で穴を見つける必要があります。

なかなかしゃべりながらできることではありませんね。したがって、沢山しゃべった人間は負けです。
ガンガン捲し立てて押し切ればその場のコントロールに成功することはあるかも知れませんが、最終的にその判断が妥当なのか?単純に自分に都合の良い方に誘導してしまっただけではないのか?もっと良い意見を持っている人の口に蓋をしてしまったのではないか?疑念が残ります。 議論で優勢に立てば気持ちが良いですし、自分の意見が通ればスカッとします。しかしそのような歪みを孕んだ行為の積み重ねの先に最終的な勝利はありません。

このポストの内容は以下の書籍の一部(原文)です。興味のある方はぜひ書籍をお求めください。

幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする