Q. 発想を飛ばすためには一人でじっくり考える時間を取った方が良いのか?

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企画を考える際にどのような行動を取るか?という話ですが、当然ながらやり方はひとつではありません。
ここではあくまで私個人のスタンスについて書きます。

まず知識の蓄積というものは何事にも必須だと考えます。
「一人でじっくり」はこれですね。

アイディアというものは所詮連想ゲームです。
アイディアはほとんどがアナロジー(類似性)の応用でしかありません。
何もないところからポンと芽が出てくるようなイメージは間違っています。
したがって種はきちんと植えておかなければなりません。
この作業は地道ですしいつ芽が出るかはわかりません。しかし全てのベースです。
「アイディア出せって言われても全く何も浮かばない」という方はひょっとしたらこのフェーズが不十分なのかも知れません。 まずはきちんと時間を取ってお勉強して下さい。

さて、もしこのフェーズがある程度クリアできているのであれば、実際に発想を飛ばして物事を考える時って?というと私は他者との関わりを圧倒的にお勧めします。

我々はブッダではないので長期間の瞑想によってパッと悟りが得られるというような超神秘的なものに期待するわけにはいきません。通常は前述した知識のノードごとのシナプスを繋ぎ合わせる必要がありますがその際に助けとなるのが、他者の「なにがし」なのです。
「なにがし」は発言であったり、行動であったり、失敗であったり。様々なものが入り得ます。
これは必ずしも「チームでブレストをやるといい」と言っているわけではありません。
立ち話の雑談でも、飲み会でも、LINEでのやりとりでも、何でも良いのです。人一人が体験することなどたかが知れています。

脳神経学の領域で、「直感」と呼ばれる脳のアクションは既に明確になっています。
直感は女性の脳に発達しやすく、その理由は「他者の経験話を聞く際の脳のリアクションに男女間で大きな違いがあるから」だと言われています。男性は言語的に整理された「事実」として他者の話を聞きますが、女性は他者の経験を「あたかも自分の経験のように」聞いているのです。その結果「直感」という「経験に基づいたシナプス回路」が十分に鍛えられるのだということです。 つまり直感というのは十分に鍛錬された脳神経回路のことであって、適当な勘というものとは明らかに違います。

例えば、画像認識などのAIを開発するというと、広いフロアにずらーっと並んだスーパーコンピューターやクラウドシステムがイメージに浮かぶと思います。しかし実際の画像認識機能自体はスマホや最近では小さなシリコン(IC)の中に載っています。これはパターン学習する過程では大きなリソース(先程のスパコンみたいな)が必要ですが、ある程度学習が済んだものを抽象化して実用レベルで実装するとサイズとしては大した処理ではなくなってしまう(ICに入る)からです。
直感は「決まりきったパターンへの対応に脳みそのリソースを節約する」という極めて合理的な行為なのです。
そして、そのための助けになるのが他者の経験や周辺で起きた出来事なのです。
それらを積極的に取り込むことで、素直で優れた直感力を鍛え、元々の知識が再統合されるタイミングを心待ちにする、というのが企画の基本スタンスであって、デスクにかじりついてネットサーフィンしていれば何かが出てくるわけではありません。

むしろそんな暇があったら例えば久しぶりの友人に声をかけて食事にでも出かけてみましょう。新たなシナプスの結合が得られるはずです。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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