Draw Down〜地球温暖化を逆転させる100の方法〜についてメモ(材料部門)

投稿者: | 12月 6, 2021

『Draw Down』はアメリカのライターが主導し、世界各国の研究者たちが寄稿したプロジェクト的な書籍である。
「ドローダウン=二酸化炭素が減少に転じること」のためにできることを、現状行われていることの展望と未来の技術の紹介の大きく2つに分けて示している。
特に「現状の理解」は私個人多くの項目の詳細を知らなかった(あるいは認識すらしていなかった)ため衝撃的だった。社会人必読書と言って良い。
しかし400ページ超の2段組ということで実質的なボリュームは一般的な単行本でゆうに3冊分あり、割と読むのが早い私でも読了に1ヶ月以上かかった。

そこである程度エッセンスを抽出して整理したいと思う。 兎にも角にも「全体感」を掴むにはうってつけの書物だ。

ここでは材料部門と分類がハッキリしなかったものを挙げる。

リサイクル

先進国と同水準のリサイクル率の貧困国がある。
むしろ小規模なリサイクルは零細企業の典型的ビジネスモデルだ。

Der grune prunkt:グリーンマーク ドイツの、メーカーに費用を出させて業者が回収を行うシステム
EPR:拡大生産者責任 回収とリサイクルを生産者に義務付ける考え方。オランダなど
マテリアルズマーケットプレイス:二次原料(再生材)取引のためのネット上のマーケットプレイス

冷媒

温室効果ガス削減度合いが最も期待される項目。
冷媒に使われていたクロロフルオロカーボンCFCやハイドロクロロフルオロカーボンHCFCはオゾン層破壊が問題になり削減が進んでいる。
しかし代替フロンと呼ばれるハイドロフルオロカーボンHFCは温室効果が二酸化炭素の1000-9000倍。
冷媒の温室効果ガス放出の90%は廃棄時であり、再利用あるいは無害化することが課題だが、排出が回避できれば他の何よりも温室効果ガス削減効果が高いと考えられる。

中国のエアコン使用率は1995-2007で7%から95%に増加している。

2016年にキガリ協定:強制力や罰則を含むものが作られた

自然冷媒:プロパン、アンモニア、高圧の二酸化炭素などを用いるものが期待される。

バイオプラスチック

ポリマー(可塑性をもたらす鎖状構造)は至るところに存在し、実はプラスチックを作るために石油を使う理由は多くない。

・セルロースは植物の細胞壁を作るポリマー
・キチンは甲殻類や昆虫の外骨格を作るポリマー
・ジャガイモ、サトウキビ、樹皮、藻類、エビ、どれもポリマーがある

過去にはビリヤードボールの象牙が非難され、セルロイドが開発された。 結局ビリヤードボールには向かなかったがクシ、歯ブラシ、フィルムなどに使われた。 セルロイドに遅れて石油系プラスチックのベークライトが発明され、1970年代の石油危機までバイオプラスチックは忘れられた。

1941年にフォードはバイオプラスチックによる大豆カーを作ったが、石油が圧倒的底値だったせいで負けた。

サトウキビやトウモロコシ由来のポリエチレン(PE)レジ袋は生分解しないが、ポリ乳酸(PLA)であれば高温で生分解する。 低温で生分解するものもあり海洋プラスチック問題に役に立つと考えられている。

プラスチック全体の僅か5%しかリサイクルされておらず焼却か埋め立てされているのが現実。

コンクリート

128年に作られたローマのパンテオン神殿は最古にして最大の無筋コンクリート建造物で、現代の一般的なコンクリートを凌ぐ強度を持っている。 再びコンクリートが進化するのは19世紀以降。

コンクリートの強度向上のために二酸化炭素を吸着させるという手法がある。しかし、コンクリート製造の過程での排出の方がはるかに大きいのが現状。

セメントは窯で燃焼させて二酸化炭素を分離する。
製鉄の産廃である高炉スラグ、石炭火力の産廃であるフライアッシュはセメント加工の代替材料になる。
フライアッシュは窯を使わない。 ニューヨークではガラス瓶を粉砕して使っている。

製紙産業の温室効果ガス排出量は航空産業を上回る

以下は未分類の項目。

DAC:Direct Air Capture

化学物質(アミン系)や多孔質ハニカムセラミックなどに二酸化炭素を吸着させる技術。
吸着後に熱を与えることでその二酸化炭素を取り出すと吸着剤は再利用できる。

問題は大量の空気を触れさせないと意味があるレベルの二酸化炭素を取り出せないということと、エネルギーを与えないと二酸化炭素の排出ができないこと。
さらに言えば、圧縮二酸化炭素の市場が難しい。 燃料にする、炭酸飲料に入れる、など用途はあるがそもそも二酸化炭素は豊富にあるから価格で勝てない。 やっぱり埋めるくらいしかないというのが現実。

調理コンロ

人類の40%は未だに原始的なコンロで調理している。
燃料は薪、炭、動物のフン、作物残渣、石炭など。
これらが煙煤を生じ住民たちの寿命を縮めている。

家庭内大気汚染は、HIV、エイズ、マラリアを合わせたより早期死亡を増やしている。

不完全燃焼によって生じる煤(ブラックカーボン)は二酸化炭素の百万倍の温室効果があるが十日程度で消える(SLCP:短寿命機構汚染物質) したがってブラックカーボンの削減には即効性がある。
ブラックカーボンの1/4は家庭から発生している。

GACC:クリーンな調理コンロ普及のための世界連盟
昔からあるプロジェクトだが成果は不十分。 多くの会社が新しいコンロを開発したが、UXを理解せずに的外れな製品を作ったメーカーや温室効果ガス削減には効果の薄い製品を作ったメーカーばかりで進捗は悪い。
コンロは文化に溶け込む必要性がある。

男女平等

女性の方が収入の多くを健康や教育に再投資するというデータがある。
また男女平等の進行度合いと穀物の面積あたり収量は相関がある。

マララ・ユスフザイ:タリバン政権下で女性の権利を訴えノーベル賞
タリバンの襲撃を受けたこともある。
「社会的ワクチン」
女児の教育を充実させるだけで世界のほとんどの問題が解決すると訴えた。

人口問題

人口問題は、ウガンダやウズベキスタンの問題ではない。 女性の45%が望まない妊娠を経験し一人あたり化石燃料使用量がトップクラスの米国のような国々の問題である。

[関連リンク]
・Draw Downについてメモ(エネルギー部門)
・Draw Downについてメモ(農業部門)
・Draw Downについてメモ(自然保護)
・Draw Downについてメモ(運輸部門)
・Draw Downについてメモ(建設・都市部門)