Q. 社会人に学び直しは必要か?

投稿者: | 8月 7, 2021

よく言われる課題です。
私は自分の子供たち、特に小学生の長男に口酸っぱく言っていることがあります。最近ではそれを察して彼が自分から言って来ることも増えてきました。
それは「自力で学ぶ力を何よりも大事にしろ」ということです。

私はいつになっても、どのような職業でどのようなステータスであったとしても、常に学び直しは必要だと考えています。 この100の回答全編では意識的に可能な限り多くの事柄について触れるようにしています。特殊な用途に絞ってはいません。 それらは私が社会人の初期に身につけたこともあれば、渡米してから身につけたこともあり、スタートアップで七転八倒した末の気づきもあります。 これらは常に学びです。

こと「学び直し」と言われると大きな規模で想像してしまう人がほとんどかも知れません。 例えば、大学に入り直すだとか、社会人大学院で博士号を取るだとか。 しかし私はそこまでの大きな学び直しが必ずしも必要だと思っているわけではありません。当然何かしらキャリアの大きな分岐点において大学に入り直すことが良い効果をもたらすことはあります。

シリコンバレーで一緒に働いていてJくんは最初の学士をアナログオーディオの専門で取ったものも、仕事の守備範囲が非常に狭いことに気づいて電気電子で取り直したと言っていました。今はFitbitで働いています。 前項でも紹介した元町医者のJくんはMITで大学院に入り直してそこで創業時のCTOのLくんや技術提供をしてくれることになる教授と出会い、起業のきっかけを掴みました。今はFacebookで働いています。

アメリカではこのように大なり小なりキャリア転換を学位取得によって行うことがあります。これはアメリカが割と学歴を重視する社会だからです。それには様々な背景があると思いますが、一点は従業員を育成する感覚があまりないことだと思います。「既にある程度できる人間を採りたい」という気持ちは強く、そのため学位を重要視する傾向があります。

日本では幸運なことにそこまで学位が必ずしも重視されるわけではありません。したがって、高額な費用と長い期間を費やさずとも、有益な知識を都度短時間の学び直しで取得し続けるのがキャリアを豊かにするコツだと思います。

大掛かりな学び直しではなく、小規模な学び直しとして個人的に強くお勧めしたいのが読書です。 それもいわゆる「啓蒙書」や「実用書」ではなく「専門書」を読むことです。それもなんちゃらコンサルタントが書いた書籍ではなく、どこかの、できればその分野で主流派の大学教授が書いた、大学の講義で使われているような書籍を読むことです。 インターネットは多くの情報で溢れていますが、その実態は究極の玉石混淆です。例えば以前とあるテレビ番組で「Wikipediaには嘘がたくさんある」と紹介されてゲストがびっくりする、なんてシーンがありましたが、インターネットの良さは発信の手軽さであり、発信が手軽であるということはそれだけ総体としての情報の確度が下がるということでもあります。 その点書籍は、特に専門書は、古臭く難解で読みづらく多くの手間と時間がかかるという印象があると思います。しかし知識を体系立てて整理することが多くの専門書の目的ですので、こと「学ぶ」ということに対してこれほど最適なものはありません。

ちなみに自らが門外漢の分野の書籍に取り組む際にお勧めのやり方があります。これは以前コンサルタントのO氏との会話の中に出てきたのですが「とりあえず3冊読む」というものです。 1冊1冊を丁寧に読んでわからない用語は調べてノートにまとめて、というようなことをやるのではなく、とりあえずあまり深く考えずに同一カテゴリの本を3冊は読んでしまうのです。そうすると2冊目、3冊目と読んでいるうちに見覚えのある単語や同じ論調、同じグラフや同じ歴史的事実が出てくることに気がつきます。 このような経験をしたとき、人はその時のこと=知識をほとんど忘れません。

最後に、最も簡単で明日からできるミニマムな学び直しは「質問すること」です。 会議の中でよくわからない単語が出てきたらその場で聞く、仕事のディスカッションをしているところで論理の飛躍(みんなには暗黙の了解ぽいもの)が出てきたらその過程を聞く、隣の席の自分とは違う業務をしている人がいたらその(謎の単語だらけの)業務にも興味を持って内容を聞く。 実はこれも冒頭の小学生の息子によく言っていることです。 「恥ずかしいのはわからないことじゃなく、わからないということを正直に言えないこと」