Q. グローバルで通用するビジネスモデルを考えることは必須ですか?

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グローバルであることは必ずしも重要ではありませんが、横展開の可能性が確保されていることはとても重要だと思います。 何事も単発のビジネスできちんとグロースさせることは一般に難しいです。

一点、誤解のないように断っておくと、全くの単発のように外部から見えているサービスだとしても、その内部ではビジネスセグメントの拡大や他サービスの組み込みや融合など変化を伴いながら成長しているものです。 そのような成長戦略を引く上で障害になるようなボトルネックが多いプロダクトは中長期的なグロースが難しいのでできる限り企画の時点でその目は摘むべきです。

さて一方、私はなんでもかんでもグローバル展開する必要はないと考えています。理由はグローバル展開は思うよりも遥かに上手くいかないことの方が多いからです。 理由はいくつかありますがまとめて言うならば「文化の違いを発端にしたリソース面の問題」です。

海外に展開した際に侮れないのが「文化の違い」です。カスタマーそのものの日々の生活の違いもありますし、商習慣の違いもあります。

例えば高級オーディオを開発していた頃の話ですが、まず国によって家屋の構造が大きく異なります。当時はアメリカをメインの市場として考えていたためにかなり大きなリビングルームがある家を想定して商品を企画開発していました。それが果たして東南アジアに当てはまるでしょうか?

また、ロシアでばかり起きるトラブルがあって検証した結果「機器の設置位置が異常に寒いか異常に暑いかのどちらか極端だ」という結論が得られました。どういうことだか想像がつくでしょうか?オーディオ機器は一般に部屋の端に置かれることが多いです。ロシアの窓際はさぞ寒いでしょうね。また暖房器具というのはどこにあるでしょうか。そうです。暖炉の横に置かれたり、窓際に置かれたり、はたまたそれが同時に起こったり、そんなめちゃくちゃな環境だったわけです。

そのようなユースケースにぶつかると品質保証に対する考え方を根本から変える必要があります。 このような文化の違いをきちんと指摘、吸収する役割を持つのが一般に「現地駐在員」です。ローカルスタッフの場合もあるかも知れませんが、逆に彼らは日本の「文化」を知らないことが多いのでほとんどの場合で駐在員が有効です。

駐在員を送り出すコストは? ひとり送り込むと年間3000万円、というような計算をすると多くの会社の現実と概ね一致するように思います。かなり大きな額だと思います。特に初期のスタートアップなどに年収3000万円で雇っているスタッフなんて、なかなかいませんよね。

しかし駐在員を送り込むということ、きちんとグローバル展開すること、というのはそのような出費を覚悟することを指します。多くの企業がこれをケチって失敗します。 メルカリが米国展開する際に取締役が全員アメリカに移住したというのは有名な話です。そのくらいの覚悟がなければ海外市場で成功することは難しいと理解しているのだと思います。

しかしながらグローバル展開がイージーなタイプのビジネスも一部あると思います。 条件を列挙すると
・非言語的である
・法規制が無い(あるいは万国共通の規格)
・生活に密着である(どこでも同じ箇所で同じように使う)
というように記述できます。これら条件は要するに、ニーズの整理や商品性の説明や導入する際の中間コスト(労力)が極めて低い、というように整理できると思います。 構造および用途がシンプルな製品であればこのような条件に当てはまることはそれなりに多いように思います。

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幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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