Q. 海外で経験を積むのは若い方がいい?

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私は自分のキャリアに関してほとんど後悔というものがありません。

それは失敗が無いという意味ではなく、失敗も成功も全てが糧になっているという意味です。 人生様々なところで選択を求められます。受験で2校に受かったけどどちらに行くか?就職先は?今の仕事を続けるべきか、異動するべきか?転職するべきか?結婚、育児、もろもろです。

しかし私にも一個だけ後悔していることがあります。 それは学生時代に海外に出なかったことです。

私は旅行好きだったので観光で様々なところに行きました。 しかし、アメリカに住んで決定的に感じたことは、行くと住むでは大違いだということです。

第一に例えば現地の独特な風習。観光であれば面白がって見るだけで良いですが、住むとなったらそれに溶け込まなければなりません。それによって不都合を感じることもあります。その場合は戦うかどうか決めなければなりません。これはとてもヘビーなことです。

次に住むとなったら稼ぎを得るために仕事をしなければなりません。遊びに行ってその場限りの友達を現地で作るのと、毎日一緒に過ごす同僚を作るのは大きく違います。楽しい時間のみを過ごすわけではないからです。当然コミュニケーションの問題も発生します。出身の違いや死生観や宗教の違いが立ちはだかることもあります。これらとも真剣に向き合わなければなりません。

そして、これは行く場所や飛び込む環境によって多少異なるとは思いますが、多くの場合でぽっと出の余所者はみんなにとって非常に扱いづらい存在です。その時保守的な人間が取る典型的な行動があなたを低く見ることです。 これは好ましくない行為ですが、悪意というよりは敵意というか、防衛本能に近い行動ですのである程度は仕方ないと思います。新しい環境に入るときは多かれ少なかれそれを覚悟すべきです。

さて、ここで挙げたような「ツラい要素」が幾分和らぐのが言うまでもなく「学生時代」です。

ある友人は大学でアメリカに留学した時に全く英語の会話についていけなくて半年くらいほぼ引きこもり状態だったと言います。そこで徹底的に英語を勉強し直したそうです。学生だったら多少単位を落としても所詮かすり傷です。時間はたっぷりあります。 勉強をしにきているということはそのままイコール仕事はしなくて良いということです。なんと羨ましい。 仮に10代の若者であれば、その時点で抱えているプライドなどたかが知れています。全国模試で上位?日本でトップクラスの大学に合格した?そんなちっぽけなプライドは10代のうちに捨てれたらラッキー。その後の人生はずっと幸せなものになります。

社会人で唐突に海外に出るのはかなりしんどい話だったなと自分の経験から思います。 確かに、リアルな多様性を学ぶことができましたし、新たな価値観の軸も作れました。コミュニケーションの引き出しも増えましたし、自分が他人からどう見えているかについても考える機会を得ました。 しかし「コレこの歳になって妻子抱えてやることじゃなかったな」と率直に思います(家族に感謝)。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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