アミン使用を楽観してはならない
アミン系溶剤は現行の実用レベルなCCS(Carbon Capture and Storage)プラントで多く用いられているが、個人的には特に疑問も懸念もなく受け入れていた。またリプレイスの試みが進んでいる認識はあったが毒性の視点は正直まったく意識していなかった(知らなかった)話なのでメモ程度だがまとめておく。
こちらの記事
”What Is the Impact of Amine Emissions?”
https://www.envirotech-online.com/news/gas-detection/8/breaking-news/what-is-the-impact-of-amine-emissions/58352
に書いてあることを要約する。
アミンは二酸化炭素除去にとても有用である
排気ガス(主に発電プラントを想定)からの二酸化炭素除去というのはエネルギー政策の視点からも非常に重要な技術課題である。アミン系溶剤を使ったプロセスは常温常圧で動作するため既存プラントへの後付けで構築しやすく、コスト面や効率面でも悪くない。
火力発電所で使う場合は余熱でCO2をリリースさせる熱も確保できるし、圧力をかけて液体化させてパイプラインに流すエネルギーも確保しやすい。
ということで現状アミン系が主流だ。
アミンの漏出
アミンの漏出はプロセスの様々なところで起こり得る。排気ガスの中に含まれたり、排水に含まれたり、構成部品そのものから漏れ出たりする。
そして重要な点は、これら漏出に関する規制がきちんと存在しないということだ。
そのため、回収後の二酸化炭素の純度に関する議論は極めて活発だが、アミン漏出とその濃度に関する議論はあまり活発だとは言えない。
ニトロソアミン
アミンが大気中に放出された際に派生する化合物にニトロソアミンがある。
- 生分解性が極めて低い(放っておいても自然になくならない)
- 毒性が高い
- 移動性が高い(汚染が広がりやすい)
というような特徴を持ち、健康および環境に最悪レベルの悪性物質であると言える。
しかし実質的に現在の飲料水等に含まれるニトロソアミンはごく少量であり、影響について検討する必要性はないと一般には考えられている。それがゆえ、アミン系物質の濃度が少し上がった時にどの程度の量でどのような影響が出るかという詳細な研究が十分に行われていない。
また実質的な規制が存在しないという背景から、実際の産業領域においてどの程度のアミンがどのくらい排出されているのかそもそもの計測データが存在しない。
IEAの見解の中では、カーボンオフセットの観点からCCSプラントは現在の数倍ではなく数十倍レベルが必要になると考えられている。これにはIPCCも同調している。
しかしその時期が来た時に、どれほどのアミンがプラントから放出され、どのくらいの環境負荷と健康被害が発生するか(あるいは発生しないのか)実は見当がついていない。