Category: 技術・開発

Q. 中国の無線認証にはとにかく時間と金がかかるから中国で製品なんて出すべきではない?

製品リリースに関わったことが無い方にはあまり馴染みのない話かも知れませんが、界隈ではよく言われている話です。 製品によって出すべき出すべきではないなど様々に異なるため当然ながら一概なことは言えません。したがって、あくまでここでは、何故そのようなことを言う人がいるのかについて書きます。 私がある違和感に気付いたのは、とある製品のリリースのために各国認証について調べていた時のことです。今から10年以上前の話。 無線製品には便利な認証方式として「モジュール認証」というものがあります。 前述の意図的放射と非意図的... Read More >>

アミン使用を楽観してはならない

アミン系溶剤は現行の実用レベルなCCS(Carbon Capture and Storage)プラントで多く用いられているが、個人的には特に疑問も懸念もなく受け入れていた。またリプレイスの試みが進んでいる認識はあったが毒性の視点は正直まったく意識していなかった(知らなかった)話なのでメモ程度だがまとめておく。 こちらの記事 ”What Is the Impact of Amine Emissions?”https://www.envirotech-online.com/news/gas-detection... Read More >>

Q. 要求仕様書をどのくらいのレベルで書いて開発を進めるべきか?

要求仕様書のテンプレート自体はことさら私が述べる必要もなく、各種機関およびボランティアが様々なものを提供してくれています。自分の感覚やチームに合っているものを使用していただければそれで良いと思います。 したがってここでは「これがないとマズい」という典型例についていくつか取り上げます。 <オーソライズされていない> ドキュメントの重要な役割が「みんなで確認して」「承認して」「いつでも取り出し可能にしておく」ということです。 自分の脳みその中をまとめたメモ、というものも当然あって構いませんが、それは仕様書で... Read More >>

Q. 要求仕様書は初期に書くべきか?

【異論①】 できる限り初期にきちんとしたものを書くべき。早めにどのようなものを何故作るのかきちんと定義しておかないと、開発中の判断がいきあたりばったりになってしまう。 【異論②】 外部とのコミュニケーションが発生するときに書くべき。内部で運用している限りはメモ書きやホワイトボード上のまとめで十分。何故なら仕様なんてコロコロ変わるから。その都度書き直していたら毎日書き直す羽目になる。 【異論③】 本当に必要なとき以外は書かない。コスト=労力に見合うメリットが無い。 【九頭龍の考え】 アメリカに行った当... Read More >>

Q. とりあえず作るプロトタイプは1台で十分ですか?

これ、たまに受ける質問なのですが、基本的にこの質問をしてくるのは自分では試作品を作らない方です。 何故なら自分で試作品を作っている人たちは「色々信用していない」からです。 <基板屋を信用していない> 私は実装基板を作る際には必ず1枚余分に生基板(部品が載っていない基板)を手配するようにしていました。部品の実装工程とは別に自分の手元で生基板の出来を確認するためです。 以前一度、多層基板の内層回路が全て無いことがありました。原因は基板メーカーの間のデータの取り違いでした。 お粗末な話ですが私はそれに気付くま... Read More >>

Q. PoCを何度かやっているが成果が出ない。何故だと思いますか?

実はこれ変な質問なんですよね。 PoC = Proof of Concept は「仮説の証明」という言われ方もしますが、何かしら製品なりサービスなりのアイディアを想起したあとにまず行う実験、というような位置付けで用いられることが多い言葉ではないかと思います。 製品やサービスの開発というものは時間もお金もかかります。 決裁者の立場を想像してみればわかると思いますが、数億を費やすプロジェクトのGo/No-Goをよくできたプレゼン資料の数十枚で判断できるわけありません。 「ここに書いてあることが本当だと実証して... Read More >>

Q. 製品開発スケジュールを書く上で調達のリスクが最も大きい?

プロジェクトマネージメント(PM)の方はよくガントチャートを書きます。 それぞれのタスクやその担当者が各行に列挙され、そこから横向きに伸びた棒線が時系列でそのタスクがどこにあたるかを示している図表です。 きちんとしたプロのPMの方はタスクとサブタスクをきちんと分解し網羅的にスケジューリングを行います。 しかしながら商品の企画段階やもっと上位レイヤでのスケジューリング、例えばプロモーションや販促物、展示会イベントなども並べて描くようなざっくりしたチャートの場合、表現の粒度が下がります。 そのような時に最も見... Read More >>

Q. 開発中に競合が同じような製品を出してきた!どう捉える?

このようなケース。自分が実際に出くわすと「よりによってマジかよ!」と思うのですが、客観的にはよく受ける典型的な相談のひとつです。 「先を越された(焦)」とか「もう今更出しても新規性がない」だとか、ともすれば悲観的に捉えがちなこの状況なのですが、まずラッキーだと考えることにしましょう。 まず一点、自分の仮説が全くの的外れではなかったんだなという確証をひとつ得た、と考えることができます。 同じようなことをやる人がいると言う事はそのコンセプトに同意してくれる方が他にもいると言う意味です。 彼もあなたと同じよう... Read More >>

Q. プロトができていたら製造ってどこかにお願いしたらパッと作ってもらえるものなんですか?

私はファブありの企業、ファブレスの企業、どちらでも働いたことがあります。 多くの場合でスタートアップはファブレスへと流れます。自社工場を抱えることにはイニシャルコストだけでなく非常に大きな固定費がかかり続けるからです。 それでも多くの大企業がファブありの状況を続けています。それにはコストやサプライチェーンの最適化以外にも以下の理由があるように私は思います。 それは試作から製造までの意識の統一です。 多くのファブレス企業の場合、まずは自分たちでプロトタイプを作ってみて、動作確認をして、デモをやり、誰かの目に... Read More >>

Q. 量産に踏み切るぞ!という判断タイミングがさっぱりわからないのですが。。。

勘と本能と思い切りです。と言いたいところなのですが、少々理屈っぽいことも書いておきます。 まず、どこまでいったら製造して良いという技術的基準など一般には存在しないので、必然的に経営レイヤでの判断となります。 ほとんどのスタートアップは一度量産をしてもし失敗したらそこで資金が尽きてしまうのではないかと思います。 したがってまさしく「生きるか死ぬか」の非常に重たい判断です。 この重たい判断を下す場合に好ましくない思考方法を展開する方がいます。いくつか典型的事例を示しましょう。 「元々のスケジュールで決まってる... Read More >>

Q. とりあえず中国で作れば間違いないんでしょ?

流石にそう面と向かってハッキリと聞いてくる人は稀ですが(ゼロではない)多くの方の頭の中にこのセリフがあるんだろうなというのはひしひしと感じます。 そもそも中国が世界の工場と呼ばれるほどの影響力を持つようになったのはここ十年ほどの話かと思います。 その前の十年間の中国はリーズナブルな外注先であり大企業の投資対象(設備含む)でした。 さらにその前の十年間は、まだまだリスキーだが明らかに中国が変わろうとしている、と少なくない方々の認識に入り始めた時期だったように思います。 中国という国について考える際、あまり単... Read More >>

Q. 中国って何であんなに安く製品作れるんですか?

中国製造の安さのカラクリについては、様々なレイヤーで様々な意見がありますので以下に示すのはあくまで私が認識している範囲のことです。 まず1つ明らかに目につくのは中国ローカルシリコンの採用です。私は仕事上、市場の製品を買って分解して中身を見ることがよくあります。その際に中国製品をバラすとすぐに気づくのが、 いくつもの見たことも聞いたこともないICが基板上に乗っているということです。 ICの表面に銘板が書いてあるためそれを手がかりにデータシートを探します。しかし手に入るデータシートは全て中国語のみで、かろう... Read More >>

Q. 金型にものすごくお金がかかるというのは本当でしょうか?

本当です。 金型はスケジュールも財布も圧迫するものづくり界最大のリスクファクターです。 例えば、ちょっとした箱、上下で挟み込むような構造のものを作るだけで、場合によっては数百万単位の費用がかかります。 もし構造が複雑であったり、複数の素材を使用した多色成型であったり、精度に大きな制約があった場合はさらに上がり、1000万円以上かかるようなケースも決して珍しくはありません。なお自動車のフロントパネル(内装)のような大きな樹脂部品の金型では5000万円以上かかることもあるそうです。 大きなイニシャルコストは価... Read More >>

Q. 電子機器を製品で出すときに法規制ってあるんすか?

これは非常によく受ける相談で、実は法規制の全体像について体系立てて説明してくれている良いコンテンツはあまり無いように思います。理由は規制は国ごとに異なる上にコロコロ変わるからだと思います。 したがって大抵大きな企業では規格に関して調査する専門の部門が存在していて常に各国の動向にアンテナを伸ばしています。 小さな企業では必要なタイミングで外部のコンサルタントに意見を聞くことが多いです。 さて、ここでは厳密性というよりは極力全体像を捉えることができるように説明したいと思います。最新の情報や詳細は適切な機関から... Read More >>

Q. 価格設定のやり方がさっぱりわかりません

製品をリリースする時に必ず決めなければならないのが価格です。 一般に「原価の3倍にしておけば大丈夫」という雑な言い方がされますが、これがなかなか絶妙なもので大抵的を得ています。 まず価格を決める際に考えなければならないことが「ビジネスモデル」と「事業形態」です。 ビジネスモデルは端的に言えば「どうやって儲けるか」です。 製品を売ってそこで利益を取るシンプルなモデルもあれば、製品購入者にサブスクリプションのサービスを提供してそこで儲けるモデルもあります。また製品本体では儲けを取らず、付属品やオプションのサー... Read More >>

Q. 取説って何を書くべきですか?

取扱説明書(取説)はその名の通り製品の取り扱い方の説明が書いてあればそれで良いかというと、微妙に違います。 ここではその点について解説します。 <取説は規格関連の記載場所でもある> 様々な規格に関係して取説への記載を求めるあるいは推奨されるものが少なくありません。 試しに電子機器製品の取説を見てみると、いわゆる取り扱い方が記載されているもの(カラフルであったり紙が立派であったり読みやすいもの)とは別に、やたら長文が各国言語で書いてあるもの(白黒で文字が小さく読みにくいもの)が入っていることが多いと思いま... Read More >>

Q. 自社の社員に法規制に詳しい人間がいない。どうするべきか?

法律関係の話は失敗した時のリスクが極めて高いです。したがって必ず専門家の意見を聞く必要があります。 とはいえ立ち上げたばかりのスタートアップなどではそういうツテが無いことがほとんどではないかと思います。 以下にいくつか具体的な問い合わせ先の探し方について書いておきます。 <生産に向けての十分な資金がある状況> 規格関連の情報を提供したり具体的な申請作業の代行をするエージェントという仕事があります。 大掛かりな組織としてやっている会社もあれば、フリーランスのような形で仲介をしてくれる方もいます。ネットで軽... Read More >>

Carbon Capture and Storage(炭素回収&貯留)を理解する ②

前回のポスト に引き続き、edXにてEdinburgh Universityが提供しているオンラインクラス “CCSx: Climate Change: Carbon Capture and Storage” で学んだことを、自らのメモの意味合いで何回かに分けてサマライズしておく(ついでに誰かの役に立てば幸いだ) CCSが入り込んでいく領域 製造業ではコンクリートと鉄鋼業。そしてエネルギー。再生可能エネルギーと原子力を推し進めるだけの脱炭素では我々の世代のうちにCarbon Bud... Read More >>

Q. 100万台売らない製品で凝ったことをしてはいけない?

開発は一筋縄ではいきません。 開発途中での仕様変更、問題解決の目処が一向に見えないまま期限が迫る、金型作り直し、特許使用料交渉の決裂、様々な課題が立ちはだかります。ちなみに私は「工場が火事で部品燃える」という経験もあります。 さて、製品を出すことに対しては多くの関係者がコミットメントを持っています。 したがってちょっとやそっとの問題や課題で諦めるわけがありません。 しかし、実際冷静になると「ここまでやる必要あるのか?」というところまで追い込んでしまっていることが実はよくあります。 自分自身も身に覚えのある... Read More >>

脱プラスチックのシンプルなソリューション “LEEF”

脱プラの話は基本的に代替材料の話だ。私は高分子は専門ではないので正直よくわからない領域だが、彼らほどシンプルなソリューションであればよくわかる。 以下のBerlinで行われたカンファレンス動画で紹介されているLEEFというポツダム拠点の会社はPlam leafを用いた極めてシンプルな提案をしていた。 プロセスは極めて簡潔だ。 Palm leafの落ち葉を大量に集めて 乾かして 洗浄して プレスして(板金のプレスと同じノリに見えた) 熱を加える ポイントはこれでDisposalな製品を作るわけではなく、... Read More >>

キノンのカルボキシル化を利用した炭素回収システム

DACC(Direct Air Carbon Capture)はIPCCの第六次レポートでも「オプションではなく、DACCなしでは目標は達成されない」と明示された大注目の領域だ。 しかし既存の技術(例えばClimeworksなど)では巨大なプラントが必要であり、吸着と放出に温度および気圧のスイングが必要になること(エネルギー負荷も大きいこと)、コストが非常に高いこと、などなど課題は多い。 ここで紹介するVerboxはMIT発のテクノロジーで上記の多くの課題を解決する可能性を秘めている。 Youtube動画... Read More >>

共同開発と委託開発の違い

企業間提携あるいは事業会社とアカデミアの連携をしている中で、共同開発と委託開発の境界線が曖昧になる時があります。一方は共同開発のつもりで、もう一方は委託開発のつもりで会話をしていると、いざ契約書、となったところでトラブルに発展します。あるいはそもそも両者のうちどちらであるのかが曖昧なまま契約を結び、開発の途中でスレ違いが発生し、そのままプロジェクトが空中分解するようなこともあります。 共同開発/委託開発の活用は重要 近年完全な自社開発で事業を構築している会社はとても少ないと思います。また委託開発を発注して... Read More >>

Q.マルチプラットフォーム対応で悩むのですがどうしたらいいでしょう?

以前とある広告代理店の方とアプリについてお話ししていた際に「iOSのみ対応とか字面的に無理。あり得ない」というコメントをいただいたことがありました。逆に開発者にとってはAndroid対応が如何に面倒かということは身に染みています。理由はAndroidは端末の種類が多く、寸法や画角も様々でありまたOSにソフトウェア的なカスタマイズをかけているケースもあり、それらで網羅的に一貫した品質を確保することは非常に手間がかかります。 現在のスタンダードな対応方法は大きく分けて2つです。 ひとつは極力ネイティブアプリ... Read More >>

Q. 製造工場を巻き込む適切なタイミングは?

実際のところはケースバイケースです。いくつかの典型的事例について考えてみましょう。 <A社の場合> A社は立ち上げたばかりのスタートアップで、創業者(たち)は製造経験のあるエンジニアではありません。メンバーはほとんどが業務委託等の外部リソースで、パートタイムで力を借りながらとりあえず原理試作で動作するところまではこぎつけているとします。資金調達は開発のための最低限のシードファンディングまでで製造までの資金調達の目処はまだ立っていません。 このケースでは、製造工場を巻き込むのは時期尚早と思われます。 ひとつ... Read More >>

Q. プロト作っていきなり結合テストやるなんてレベルが低すぎですか? 〜リスク共有のやり方〜

リスクのある開発あるある 実際のところ、こういう状況って開発あるあるです。が、皆心を痛めながらやっています。 単体テストを十分にやった上で結合テストに進めなければならない。常識です。3Dプリントで評価してから切削品を作る。常識です。セルフマージ禁止。常識です。 しかし開発の全てがそのようにテンプレートどおりにいかないことを皆知っています。 念のため、どのようなケースで「テンプレートどおりにいかない事態」に陥るかというと、一般にはスケジュールが厳しい状況が考えられます。原因は様々ですが、例えば部品の入荷遅れ... Read More >>

Q. 日本人の技術力が高いというのは本当か?

実感として本当だと思います。 ただし、その分布が特徴的であるという点に注意が必要です。 例えば仮にエンジニアのスキルのバラツキがほぼ正規分布だとして、平均値が高く分散が低いのが日本人の特徴です。簡単に言うと「みんなボチボチできるけどぶっ飛んだやつは非常に少ない」という言い方ができます。 逆にシリコンバレーの住人たちで言うと、平均値はそんな驚くほど高くはないが分散が極めて大きい、という特徴が見て取れます。「ぶっちゃけ口先だけのやつも相当数紛れ込んでるんだけど、すげえやつは本当に凄くてしかもそれがいっぱいいる... Read More >>

Q. 日本の製造業は中国にはもう勝てないか?

「勝ち負け」は定義にもよりますが、「中国と同じようになる」という意味ではもはや不可能と言って良いと思います。  理由は圧倒的な資本力の差です。 日本の多くの企業は新規で大型の生産ラインに投資する資本も体力も、さらに人的リソースも足りていません。 しかしながらコロナ禍を通して多くの人々がサプライチェーン、特に生活に重要な物資の供給を他国に過剰に依存することの危険性に気づきました。 そして都合のよいことに今日本はすでに先進国ではありません。 労働賃金はさほど高くありませんが、長年のデフレで物価の上昇... Read More >>

スタートアップでものづくりしたい人たちへ

よく講演などの最後でリクエストを受ける質問への応えを書きます。私のブログを読んでくれている読者の方々には、スタートアップでものづくりをする時に如何に多くの困難が待ち受けているかということが理解できているのではないかと思います。ここではそれらを細かく挙げ直すことはしません。そのためスタートアップでものづくりをすることはほとんどの場合でお勧めできません。 もし起業がどういうものかを味わってみたいだけであれば、友人たちと空き時間を利用してアプリを作ってAWSの無料券でも使ってクラウドを用意してサービスを立ち上げ... Read More >>

20分でわかる不要輻射対策

以下の文面はある機会に作成したものですが公益性の高い内容が含まれているので切り出して公開することにしました。輻射の発生から対策の手がかり、現実的な運用まで参考になりそうなことを書きます。かなり実践寄りの内容になりますので、短めにまとめています(20分で読めるかどうかはその人次第)電磁気学の理論的な細かいところを知りたい方は是非専門書をあたって下さい。私の電磁気学のベースの知識の大体は大学で使ったこの教科書でした。 ちなみに私の不要輻射対策の実務経験としては某大手企業時代のものが概ねベースになっています。(... Read More >>