2メートルの日本人が何人いるのか、誰も知らない

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知り合いに一人もいない

先月バレーボールのネイションズリーグを観ていた。日本代表は各国に比べて小柄だが、それでも200センチ台の選手が何人か出てくる。

そこでふと気づいた。私の知人と言える範囲で、身長2メートルの日本人は一人もいない。

190センチなら数人いる。180センチ台は珍しくもない。だが2メートルはゼロだ。テレビの中にしかいない。

では実際、何人いるのか。調べれば分かると思っていた。

数えようとしたら、統計がなかった

結論から書くと、存在しない。

日本の身長統計は2本しかない。国民健康・栄養調査と、学校保健統計調査だ。

国民健康・栄養調査は標本が小さい。平成30年の身体状況調査で身長を測った男性は、全年齢合計で2,900人。1/10万の事象を捉えるには3桁足りない。公表形式も平均値とSDが基本で、詳しい集計でも99パーセンタイル止まりだ。平成28年調査の18〜29歳男性で184.9センチ。ここで打ち切られる。

学校保健統計調査は標本が数万人あるが、対象が満5歳から17歳。成人が入らない。しかも分布表は千分率(‰)で公表されるので、分解能の床が1/1万になる。1/10万は表示単位より小さい。

唯一の全数級データは特定健診だ。年3,000万人規模の実測で、BMIを出すため身長も測っている。だが公表されている分布表はBMIであって身長ではない。しかも40〜74歳限定で、最も背が高い20〜30代が丸ごと抜ける。

歴史上、日本で唯一の身長センサスは徴兵検査だった。20歳男子のほぼ全員を測っている。ただし当時の平均は160センチ前後で、単位も粗い。使えない。

仕方なく推計したら、推計のほうが壊れた

統計がないので、正規分布で計算するしかない。

成人男性の平均171.5センチ、SD5.8センチ。200センチは4.9σ。上側確率4.5×10−7で、成人男性5,000万人なら20人前後になる。

ところがこの数字が、まるで信用できない。

SDを5.5にすると6人。6.0にすると70人。パラメータを0.2動かしただけで一桁変わる。4σを超える領域では、推定が成立していない。

さらに悪いことがある。この高さでは、正常な個人差より疾患由来のほうが多くなる。マルファン症候群の有病率が約1/5,000。下垂体性成長ホルモン分泌亢進症は指定難病に指定されている。「平均+5σ」という統計の問題が、途中から有病率の問題に変わってしまう。

数えられないうえに、推計も壊れる。

検算にスポーツを使う

そこで背理法を使った。

Vリーグ、Bリーグ、相撲を合わせると、200センチを超える日本人選手は数十人はいる。もし母集団が20人なら、日本中の該当者が全員トップアスリートになっている計算になる。明らかにおかしい。

つまり正規分布の推計は過小だ。実数は数百人規模、おそらく500〜1,000人あたりが妥当な線だろう。10万〜20万人に1人ということになる。

一生で顔と名前が一致する人が数千人としても、遭遇確率は数パーセント。知人にいないのは当然だった。ちなみに190センチなら1/1,400で、期待値は1〜2人。数人いるという体感も、だいたい合っている。

数えられない理由と、全員見つかる理由は同じだった

ここで気づいたことがある。

検算の道具として持ち出したスポーツ界のほうが、実は面白い。

該当者が500〜1,000人しかいないのに、そのうち数十人がトップリーグにいる。利用率にすると5〜10パーセントだ。日本の200センチは、一割近くが競技に吸い上げられている。

統計は希少すぎて観測できない。競技は希少すぎて全員が観測される。

原因が同じで、帰結が逆になっている。母集団が薄いから標本設計の分解能を下回り、母集団が薄いから探索コストが下がって全員が発見される。同じ変数が、片方では観測の失敗を、片方では観測の成功を作っている。

試しにオランダ(身長高そう)について調べてみる

対照群としてオランダを見ると、これがきれいに裏返る。

オランダの成人男性の平均は183.8センチ、SDは7.1程度。200センチは2.28σでしかない。頻度にして約1/90だ。学年に数人いる、という水準になる。成人男性700万人なら該当者は7万8千人。

そしてオランダは徴兵登録の身体測定で、毎年10万人規模、対象年齢の男子をほぼ全員実測している。統計が存在する。

一方でバレーやバスケのプロ枠で200センチが入る席は、多くて100から200。利用率は0.2パーセント。7万8千人のうち99.8パーセントは、普通に会社員や教師をやっている。

数えられていて、誰も発掘されない。日本と対称的だと言える。

日本では200センチは、それ単独で職業選択をかなりの確率で決めてしまう変数になっている。オランダでは第一段のフィルタを通すだけで、その後の技能と意欲のフィルタが全面的に効く。同じ属性が、片方では十分条件に近く、片方では必要条件でしかない。

平均が近くても、分布の形が違えば結果は変わる

オランダは平均が高いのだから当然だ、と思うかもしれない。

だが中国を見ると、そうでもない。

中国の成人男性の平均身長は、国務院の発表で167.1センチ。省別の数値から算出しても169.7センチという値になる。日本より低い。それでも中国は、200センチ級の選手をコンスタントに揃えてくる。

効いているのは平均ではなく、分布の形だ。

省別に見ると、山東175.44センチ、北京175.32センチ、遼寧と黒龍江が175.24センチ。一方で最も低い広西は168.96センチ。省間で6.5センチの開きがある。日本は都道府県間の差が統計誤差の範囲に収まるので、ここが根本的に違う。

平均の異なる集団が混ざった分布は、単峰の分布より裾が厚くなる。しかも極端な裾では、平均の高い成分がほぼ全部を占めてしまう。人口が10倍あることよりも、この分散の効果のほうが大きく効く。

裾を作るのは平均ではなく、ばらつきのほうだ。

ただし数字には留保がいる。専修大学の森宏氏は、そもそも中国に信頼できる全国平均身長が存在するのか分からない、と書いている。省別の表も出所が民間で、調査年も対象年齢もはっきりしない。ここで挙げた値は桁の感覚として読むべきものだ。

190センチでは、日本もすでにオランダ側にいる

もう一つ、数字で確かめておきたいことがある。

190センチなら日本でも1/1,400。高校男子は3学年で約140万人だから、190センチ以上は全国に660人ほどいる計算になる。

サッカーの日本代表を見ると、W杯2026の26人で190センチ以上は2人。平均181.5センチだった。48カ国中36番目という数字が出ている。決して高くない。

だがサッカーが必要とする190センチ級はせいぜい数十人で、プールは数万人ある。利用率は1パーセントを大きく下回る。これはオランダの200センチと同じレジームだ。身長は第一段を通すだけで、選ばれるかどうかは他の変数で決まる。

だから190センチの日本代表選手は、大きいから選ばれたのではない。それ以外で勝っている。

日本で身長が十分条件になってしまうのは、200センチだけだ。そしてその200センチは、年間の男子出生数35万人に対して、1学年あたり3人か4人しか生まれない。

数えられないほど少ないものを、数え尽くして使っている。そういう状態にある。

参考

この文章は原案・ディレクション:九頭龍、作文:AIで書いています。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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