RoHSに認証機関は存在しない

最終更新日

「RoHS認証、取ってますか」と聞かれることがある。

そのたびに私は「RoHSに認証というものは無いんですよ」と答える。

そして大抵、不信と不安が入り混じった微妙な空気になる。

CEマークを貼った製品は、幸運にもいくつか世に出してきた。技術文書も組んだし、適合宣言書に署名もした。だから制度そのものは分かっているつもりでいる。分かっているのに、この会話は毎回まったく同じところで止まる。

相手は悪くない。「認証」という言葉が業界の中で普通に流通しているからだ。営業も、客も、ときには設計をやっている人間まで「RoHS認証」と言う。存在しないものの名前が、これだけ滑らかに会話に乗っているのは、考えてみるとなかなかの事態である。

制度の中身は素っ気ない。

製造者が自分で適合を判断して、自分で宣言する。届出はない。登録もない。第三者の審査もない。必要なのは技術文書と、EU適合宣言書と、CEマークの貼付だけ。適合宣言書に至ってはA4一枚だ。製品を識別して、準拠する指令と規格を書いて、署名する。それで法的要件は全部満たされる。

技術文書の方は整合規格のEN IEC 63000に沿って組む。中身はリスクベースで、サプライヤの不使用保証書か、材料組成データか、分析結果か、そのいずれかを根拠として集めろという構成になっている。分析は「怪しい箇所だけでいい」という設計思想だ。

これは合理的ではある。RoHSの閾値は均質材料単位なので、電子機器を一台まじめに全数分析したら対象は数百点になる。誰もやらない。やったら製品が出せない。

だから費用も、想像されているよりずっと安い。認証費用がゼロだからだ。実際に工数がかかるのはサプライヤへの調査票の展開と回収で、あとはリスク箇所を数点分析して書類を作るだけ。危ない箇所も偏っている。現代の電子部品はほぼ対応済みなので、実際に引っかかるのは快削真鍮の鉛、クロメート処理のクロム、PVCケーブル被覆のフタル酸エステルあたりに集中する。汎用ケーブルは毎回注意している。

ちなみにその真鍮の鉛は、除外規定の6(c)にぶら下がっている。

この除外は二十年近く延長され続けてきた。直近も2025年11月に更新されて2027年6月末まで延びた。そしてその期限に対して、既に次の延長申請が出ている。委員会が判断するまでは有効が続く、という規定なので、申請を出し続ける限り期限は事実上来ない。

(そろそろ、どちらが本則なのか分からない)

さて、ここまでが制度の話だ。

実務の話をすると、客は試験報告書を出せと言ってくる。

法的には不要である。適合宣言書があればそれで足りる。それでも言ってくる。商習慣としては、むしろそちらが主流と言っていい。

では出すのかというと、正直、天秤にかける。

相見積もりの三社目だったり、取れるかどうかも分からない入札案件の、そのまた下請けだったりすることが多いからだ。そういう時は突っぱねる。というより、突っぱねることの方が多い。

商売として意味がありそうなら出す。主要材料を数点、ISO/IEC 17025認定のラボに投げて分析レポートを取る。十万から三十万円くらいの話なので、本気の案件ならかける価値は十分にある。

つまり私は、書類を出すかどうかを法規で判断していない。

商談の確度で判断している。

そして、おそらく客の方も検証したくて言っているわけではない。言ってみて、こちらが出してくるかどうかを見ている。出してくれば本気なのだと分かる。突っぱねられれば、まあその程度の商談だったということだ。

法的に何の意味もない書類が、双方にとって本気度の測定器として機能している。

制度は検証者を置かないことにした。誰も見ないと決めた。その空席に市場が入れたのは、検証者ではなかった。値札のついたリトマス紙だった。

あの微妙な空気は、だから正しい。誰も検証しない制度を誰も信用しないというのは、感情ではなく判断として合理的である。制度が「信じてくれ」とだけ言ってきたのだから、「信じない」と返すのは筋が通っている。

ただ、ここまで書いてきて気付く。

技術文書は、まだ鉛の話をしている。

宣言書から先は、もう誰も鉛の話をしていない。

十年以上前、中国の無線認証で青くなったことを思い出す。全図面と全ソフトウェアを出せと言われて、それはコピー品が作れるということじゃないか、と。あれは過剰だと思ったし、今でも過剰だったと思っている。

ただ、あれは少なくとも誰かが見ていた。

RoHSは誰も見ていない。

どちらが安心か、と聞かれると、私はちょっと困る。

Q. 中国の無線認証にはとにかく時間と金がかかるから中国で製品なんて出すべきではない?

この文章は原案・ディレクション:九頭龍、作文:AIで書いています。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

シェアする