48チームW杯、”水増し”のチームは何勝したのか 〜コロンビアを疑っていたら、犯人はAustraliaだった〜

最終更新日

48チームになると聞いたとき、最初に思ったのは「さすがに露骨な水増しだろ」でした。

32から48。一気に1.5倍です。出場のハードルが下がって、グループリーグは弱小チームのお披露目会になり、強豪のイージーゲームが増える。そう疑う人は多いと思います。

ただ、批判する前に数えてみることにしました。昨日でグループリーグの全日程(全72試合)が終わったので、ちょうど検証できます。「2022の基準なら出られなかったチーム(=拾われ組)は、今回いったい何勝したのか」。これを実際にカウントしてみます。

数字はすべてグループリーグ終了時点のものです。ノックアウト(ラウンド32)はちょうど始まったばかりです。

まず「拾われ組」を定義する

数える前に、誰が「拾われた」のかを決めておきます。ここを曖昧にすると、結論を検証できないので。

方法はシンプルです。2026は48枠。2022の各連盟の実枠(合計32)を当てはめると、差分はちょうど16。各連盟で「2022の枠数を超えた下位チーム」を、予選順位とFIFAランクで切り落とします。残った16がこちらです。

連盟 2022→2026 拾われ組(=落ちていたはずのチーム)
UEFA13→16 (+3)チェコ、スコットランド、ボスニア
CAF5→10 (+5)コンゴDR、チュニジア、南アフリカ、カーボベルデ、ガーナ
AFC6→9 (+3)ウズベキスタン、ヨルダン、イラク
CONCACAF4→6 (+2)キュラソー、ハイチ
CONMEBOL4→6 (+2)コロンビア、パラグアイ
OFC0→1 (+1)ニュージーランド

以下、この16チームの戦績を数えていきます。

数えてみる:合計8勝

拾われ組16チームのグループリーグの勝ち星は、合計8勝でした。

ただし、相手が誰かで意味が変わります。分けると次のとおりです。

(A) 本来出ているはずの格上を倒した「下剋上」… 4勝

  • 南アフリカ 1–0 韓国
  • ボスニア 3–1 カタール
  • ガーナ 1–0 パナマ
  • パラグアイ 1–0 トルコ

(B) 拾われ組どうしの「内輪」… 4勝

  • スコットランド 1–0 ハイチ
  • コロンビア 3–1 ウズベキスタン
  • コロンビア 1–0 コンゴDR
  • コンゴDR 3–1 ウズベキスタン

(B)の4勝は、32チーム制ならそもそも組まれない試合です。両チームとも本来いないはずなので、その対戦は拡大して初めて生まれたもの。純粋な「拡大による上積み」と言えるのは、格上を倒した(A)の4勝のほうです。

ただ、その(A)の4勝も、下剋上と呼べるかは微妙です。倒した相手は韓国、カタール、パナマ、トルコで、いずれも「格上」と言い切れる相手ではありません。

とくにパラグアイ対トルコは、試合を観た印象を添えておきます。パラグアイの守備は極めて固く、前半終了間際に退場者を出して10人になりながら、ほぼ90分を守り切りました。これは見事の一言で、果てしない忍耐と勝ちへの執着がなければできないことです。トルコ側にアイディア不足や戦術の不安定さがあったのは確かですが、それを差し引いてもパラグアイを称えるべき試合でした。ただ、両者の力関係となると話は別で、FIFAランクはトルコが20位台、パラグアイが40位前後。どちらも中位で、直近のW杯はそろって2大会連続で出られておらず、近年の戦績も似たり寄ったりです。明確な格上・格下の関係がない以上、見事な勝利ではあっても、下剋上と呼ぶには弱いと思います。

なお、16チーム中7チームが決勝トーナメントに進みました。「カモばかり」という想定からすると、多い数字です。3連敗に終わったチームも5つあり(チュニジアは得失点−10)、数合わせは確かにいた一方で、健闘したチームもいた。ここまでなら「拡大も悪くなかった」で終わります。

コロンビアを疑う

ただ、この8勝の表には1つ引っかかる点があります。コロンビアです。

コロンビアは2勝1分の無敗でグループ首位通過。FIFAランクは13位前後で、ブラジルに次ぐ南米3番手クラスです。拾われた弱者には見えません。それでも拾われ組に入っているのは、南米予選で5位だったからです。2022基準(直行4+大陸間プレーオフ1)では、5位は直行できずプレーオフ送り。無条件では出られないので、機械的にここへ入れていました。

しかしこれは正確ではありません。コロンビアが弱いから5位だったのではなく、南米予選が10チームの総当たりで強豪同士が削り合うため、13位クラスでも順位は沈みます。順位(予選フォーマットの厳しさ)を実力と取り違えている、ということです。

なので、コロンビアの2勝を拾われ組に数えるのは適切ではありません。外すべきです。ただ、外す根拠がもう一つ要ります。「南米5位は弱い枠なのか、ほぼ確実に通る枠なのか」がはっきりしないと、判断できないからです。

犯人はAustraliaだった

そこで、南米5位枠の過去5大会(4.5枠時代=2006〜2022)を並べました。

大会 南米5位 プレーオフ相手(連盟) 結果
2006ウルグアイAustralia(当時OFC)●敗退(PK)
2010ウルグアイコスタリカ(CONCACAF)○突破
2014ウルグアイヨルダン(AFC)○突破(5–0)
2018ペルーニュージーランド(OFC)○突破
2022ペルーAustralia(AFC)●敗退(PK)

突破率は3/5で60%。一見すると「準ストレートとは言えない」数字ですが、内訳を見ると印象が変わります。

Australia以外(コスタリカ・ヨルダン・NZ)には3戦3勝。2014はヨルダンに5–0と一方的でした。一方、2つの敗退はどちらもAustralia相手で、いずれもPK戦決着(0–0と1–1)。内容で負けた試合は1つもなく、PKという運の部分を2回ともAustraliaに引いた、というのが実態です。

付け加えると、2006のAustraliaはOFC経由、2022はAFC経由。入口の連盟は違うのに、降ってきた相手は2回ともAustraliaでした。アジア・オセアニアの谷の年に、本来その層にいない強豪が紛れ込む、という事故です。

つまり南米5位枠の実質的な期待値は、Australiaを除けばほぼストレートインです。コロンビアを拾われ組に入れた判定は、やはり誤りでした。

そもそもコロンビアは、南米予選という最も厳しいリーグをブラジルやアルゼンチンと競り合って抜けてきた強豪です。拾われ組ではなく、優勝候補の一角と見るのが妥当でした。リスペクトを込めて、表から外します。

その2勝(どちらも内輪)を引くと、拾われ組の戦果は実質6勝(格上撃破4・内輪2)になります。

母数を出す:52勝のうちの6勝

6勝が多いのか少ないのか、全体に置いて見ます。

グループリーグは全72試合。引き分けが20試合あったので、勝敗がついたのは52試合です。

この52勝のうち、拾われ組(コロンビア除く)の白星は6。さらにそのうち、格上らしい相手を倒したのは4(前述のとおり中身は微妙です)。

  • グループリーグ全体の白星:52
  • うち拾われ組:6(約12%)
  • うち格上撃破とされるもの:4(約8%)

勝負がついた試合の12回に1回が拾われ組の勝利で、格上を倒した白星は全体の1割を切ります。「カモだらけ」というほど多くもなく、「健闘した」と持ち上げるほどでもない。全体から見れば、たまに混じる程度の数字です。

「実りが少ない」のか ——宝くじと同じ

格上を倒したのは4回だけ、中身も微妙。これを「拡大の実りは少なかった」と読むこともできます。ただ、それはサッカーを強さ比べとだけ見た場合です。

エンターテイメントとして見ると、評価は変わります。

強さの序列を正確に決めたいなら、番狂わせは邪魔です。少ないほど強いチームが順当に勝ち上がる。でもエンターテイメントとしては、結果が読めることのほうがつまらない。

48チーム制は、ここを分けています。優勝を争う上の層は、強豪をシードで守って早期につぶし合わないようにし、順当に進ませる。一方、下の層(弱いグループや初出場国)には、何が起きるか分からない余白を残す。「誰が優勝争いを繰り広げるか」はほぼ動かさず、「どこで何が起きるか」だけを増やしている設計です。

この見方なら、イージーゲームは設計ミスではなく、番狂わせを成立させるためのコストです。宝くじでハズレ券があるから当たりが成立するのと同じで、チュニジアやイラクの3連敗は、カーボベルデがスペインを0–0で止めた試合や、スコットランドの36年ぶりの勝利を生むための裏側にある。ハズレだけ消すと、当たりも消えます。

これはビジネスでもよくある話です。入口のハードルを下げると、「入れた」こと自体の価値は薄れ、「入ってから何をしたか」で評価されるようになる。FIFAが枠を広げたのは、新しい国や地域のファンと放映を取り込むためで、見ている指標は「参加国数」。純粋にサッカーを見る側の指標は「勝ち残った中身」。同じ大会でも、重視する数字が違うだけです。

予測:ベスト8はほぼ確実に"いつものメンツ"

番狂わせがどこまで上に届くか。ここは予測ですが、かなり確信しています。

ラウンド16までは拾われ組がいくつか残る。ただしベスト8の顔ぶれは、ほぼ間違いなく従来の32チーム制と同じになります。

理由は2つ。上位の強豪がシードで早期に当たらないよう守られていること。そして拾われ組の勝ち上がり組(コロンビアを除けば6チーム)の中にコロンビア対ガーナのような内輪対決があり、進むほど自然に減ること。

ちょうど傍証が出ました。ノックアウト最初の拾われ組の試合、南アフリカ対カナダは0–1で南アフリカが敗退。グループ2位で上がってきた健闘組ですが、ホストのカナダに止められました。予想どおりの立ち上がりです。

念のため、外れる条件を先に置いておきます。

ベスト8の8枠に、拾われ組(コロンビア除く)が1つでも入れば、この予測は外れ。

外れたら認めます。ただ、まず埋まらないと見ています。予想どおりなら、「枠を48に広げても、最後に勝ち残るのは結局いつもの面々」という結論になります。広がったのは間口だけで、頂上の高さは変わっていない、ということです。

おわりに

「水増しだろ」から数え始めて、コロンビアを疑い、5大会さかのぼって、Australiaに行き着いた。想定していなかった結論でした。

残ったのはこういうことです。拡大枠にはカモもいたが、健闘したチームもいた。純粋な上積みは4勝で、中身も心もとない。ただしそれは「実りが少ない」のではなく、実りの種類が「強さ比べ」から「番狂わせ」に変わっただけ。そして頂上の顔ぶれは、おそらく従来どおりに収まります。

最後に、今回大敗したチームについて。

スコットランド、ハイチ、ウズベキスタンの試合は、フルで観ました。課題は多く見えます。トップ国との力の差ははっきりしているし、つまらないミスも多い。個人の質でも見劣りします。

ただ、基礎的なこと——とくに中盤から後ろの守備——は、どのチームも走って、我慢して、踏ん張っていました。そこをサボらないチームは伸びます。日本も通ってきた道で、ここから先の大変さは、いちファンとして分かっているつもりです。一朝一夕にはいきません。10年、20年かけて、自分たちのサッカーを組み上げていくしかない。

初出場のカーボベルデやキュラソー、ウズベキスタンやヨルダン、そして3連敗に終わったチームも——世界の壁の高さを、今回、肌で知ったはずです。テレビで見るのと、自分が立つのとでは重みが違う。スコットランドも36年かけてようやく1勝でした。今回を励みに、また戻ってきてほしい。「数合わせ」と言わせないくらい、自分たちのサッカーを育てて。そのときは、また勝ち星を数えます。

48チーム制は、強者がきちんと勝ち残る仕組みを保ちつつ、弱者の健闘や番狂わせも一部で楽しめるように作られた、よくできた大会でした。「水増しだろ」と決めつけた自分への教訓は、数える前に決めつけるな、ということです。


この文章は原案・ディレクション:九頭龍、作文:AIで書いています。

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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