【連載 3/7】「これ、自分で書くよりちょっと楽なだけじゃん」と思った話 ~日本語編集編~

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正直な回です。 前回まで「AIをチームにして長編を作った」と威勢のいいことを書いてきましたが、日本語の推敲・編集フェーズに入って、私は一度ちゃんと冷めました

結論から言うと——「これ、結局は自分で書いてるのより、ちょっと楽なだけじゃないか?」 という感覚です。

AI執筆に偏見のある方に向けて正直に言うと、この作業は 極めて大変で、ひょっとしたら 自分で全部書いた方が楽だったんじゃないか と思えるくらいでした。……まあ、さすがにそれはないんですけどね。笑 でも、そう口走りたくなる程度には、地道で骨の折れる仕事でした。


何が「ちょっと楽なだけ」だったのか

AIは、初稿をものすごい速さで出してくれます。そこは本当に速い。 でも、出てきた日本語がそのまま世に出せる品質かというと、まったく別の話でした。

  • 不自然な言い回し
  • 句読点の打ち方の癖
  • 助詞や語尾の脱落
  • ふとした瞬間に混ざる「いかにもAIな文体」

たとえば、こんな一文がしれっと混ざってきます。

Stephenが、選手の輪の外で、ノートを抱えて、立っていた。

読点が多すぎて、文章が細切れに息継ぎしている。これは

Stephenは選手の輪の外で、ノートを抱えて立っていた。

くらいに整える。ほかにも、流れるべき段落が短文でブツ切りになっていたり、場面転換でもないのに「***」の区切り線が乱用されていたり、試合結果が「3対1。」みたいに名詞だけでポンと置かれていたり。一つひとつは小さいのに、放っておくと全体の品が確実に落ちるたぐいのものばかりでした。

こういうものを、一文ずつ確認して直していく作業は、結局こちらの仕事として丸ごと残ります。しかもこの判断は、AIに丸投げできない。最終的に「この日本語はアリか、ナシか」を決めるのは人間だからです。

つまり、ゼロから書く労力は減るけれど、品質を担保する労力はほとんど減らない。むしろ「他人が書いた文章を全部読んで直す」という、別種のしんどさが乗ってくる。これが「ちょっと楽なだけ」の正体でした。

結局、一番重いのは QA(読み返しと修正)だった

自分でも本を出しているのでわかるのですが、文章という仕事は QA(読み返しと修正)に最も手間がかかります。 ある小説家が「書くのは1週間、それを直すのに2〜3ヶ月かける」と言っていて、今回ほんとうに身にしみました。

実際、あらすじとプロットから最初に生成した文章の 生存率は、編集の中盤ですでに70%を切っていました。原型がどんどん削れて、書き直されていく。AIで初稿を量産できても、この「直す」工程からは誰も逃げられない——それがこの本で得た、一番正直な実感です。

長く書かせると、文体がジワジワ崩れる

もうひとつ厄介だったのが、長いセッションで生成を続けると、文体が少しずつドリフトしていくこと。 最初の章はきれいなのに、後半になるほど微妙に崩れる。実際、私はいちばん文体が安定していた序盤の章を“基準”に決めて、後半の十数章を丸ごと「序盤の章の文体に揃える」全面リライトにかけました。部分的な手直しでは追いつかなかったからです。途中で私は、作業中のAIにこんな指示も出しています。

冒頭・章末だけって考えは危険なので、きちんと全文チェックを進めてください。

ラクをして要所だけ見たくなる気持ちを、自分で戒めた一文です。結局、「冒頭と結びだけ見ればいい」は完全に罠で、全文を一文残らず読むしかありませんでした。

ルール化も徹底しました。たとえばキャラクターの口調ひとつ取っても、「地の文の助詞は省略しない」「ジェームズのセリフは助詞を省いてもいいが、体言止めを連続させない」「Stephenは興奮時を除いて助詞を正確に」「試合結果は名詞止めにせず流れる文で」「区切り線は意味のある転換のときだけ」——といった具合に、判断基準を言語化してAIに渡す。前回も書いたとおり、ここまで法則化しないとAIは応えてくれないんです。

それでも編集を回すために工夫したこと

冷めたとはいえ、投げ出すわけにもいかないので、やり方は組み直しました。

  • 「検出」と「修正」を分ける(まず問題箇所を洗い出させ、直すのは別工程)
  • 出力をdiff形式に絞る(全文を再生成させない)
  • 1パス1ルールで回す(あれもこれも同時に直させない)
  • ルールは必ず具体的なBefore/Afterに紐づける
  • 章ごとにレビュー用Markdownを作り、項目ごとに「採用/そのまま/自分で直す」をチェックボックスで判断

この「一括の名人芸を期待せず、機械的な工程に分解する」やり方にしてから、ようやく安定しました。 裏を返せば、そこまで工程設計しないと使いものにならなかった、ということでもあります。


ここまで読むと、けっこう辛口に見えるかもしれません。 でも——次回は揺り戻しです。「KDPでのリリース作業では、やっぱり生成AIに本気で助けられた」話を書きます。同じAIでも、刺さる場所がぜんぜん違ったんです。

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九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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