【連載 1/7】なぜ1980年のロンドンに主人公を放り込んだのか ~着想とあらすじ~
先日、Kindleで小説『EXTRA TIME』を出版しました。 せっかくなので、この作品が完成するまでの裏側を、何回かに分けて書き残しておこうと思います。第1回は、着想のきっかけと、どんな物語なのかの話です。
きっかけは、わりと単純だった
正直に言うと、着想はとても単純でした。 なろう系の小説を読んでいて、ふと 「これをフットボールに持ち込んだら面白そうだな」 と思った——ただ、それだけです。
ところが、実際に作り始めてみたら、自分でも驚くくらい面白くなってしまった。 「これは、世に出す意味があるんじゃないか」。そう思えたのが、本気で完成させようと決めた瞬間でした。
書いている人間のこと
私は幼い頃からフットボールをやってきて、最終的には社会人リーグまでプレーしました。選手としては大したことはありませんでしたが、観戦のほうはしぶとく続いていて、戦術について語るのが昔から大好きです。
ついでに白状すると、20数年来の Gooner(アーセナルのファン) です。 でも——この物語に、アーセナルは意図的に一切登場させていません。だって、自分の応援するクラブが勝っても負けても、なんだか落ち着かないじゃないですか。笑
あらすじ
主人公は、現代日本でサッカー戦術を解説していた引きこもりYouTuber・山田圭介。 彼はある日、1980年のロンドンで、28歳のイングランド人センターバック「ジェームズ・ブレナン」として目を覚まします。
手にしているのは、現代サッカーの戦術知識と、ピッチを読む目だけ。 そこから彼は、南ロンドンの小さなクラブ ワンドル・ワンダラーズFC を率い、下部リーグからトップリーグへと這い上がり、やがてイングランド代表をW杯優勝へと導いていきます。1980年から1994年までの、14年間の物語です。
もう一人の転生者、マルコのこと
転生ものの王道として、私には最初から 「主人公のほかに、もう一人の転生者を出したい」 という思いがありました。転生者が一人だけだと物語はどうしても一方通行になりがちで、同じだけの強みを握る好敵手が対岸にいてこそ、緊張感が生まれると思ったからです。
そうして生まれたのが、マルコ・ベルトリーニ。彼もまた、人生を何度も繰り返してきた転生者です。ただ、ジェームズとは背負ってきたものがまるで違う。その二人がどう交わり、どんな対決になっていくのかは——本編のお楽しみに取っておきます。彼がいることで、痛快なはずの“戦術無双”に、ひと癖もふた癖も加わりました。
これもまた、転生ものというジャンルのお約束に、気持ちよく乗っかった部分です。
なぜ、1980〜1994年なのか
時代設定にも、ちゃんと理由があります。
ひとつは、「戦術で無双する」という大前提が成立するくらい、昔である必要があったこと。 もうひとつは、この時代のフットボール界が、数えきれないほどのドラマに包まれていたこと。あの空気へのノスタルジーが、どうしても書きたかった。 そして個人的に一番大きいのが——1994年のワールドカップが、私が初めて意識して観て、強く記憶に焼きついた大会だったことです。
読んでくださる方の記憶や琴線と、どこかでリンクするところがあれば、これ以上に嬉しいことはありません。
タイトルは、なろうの作法に乗っかった(けど、ちょっとだけ反抗した)
着想がなろう系だったので、タイトルも当然、なろうの売れ線を真面目に研究しました。調べてみると王道の作法はかなりはっきりしていて——平均74文字前後の長文、メイン+〜サブ〜の二段構成、そして 「転生・ループ・チート・無双・追放・〜だった件・ざまぁ」 といったキーワードのバスケット。スマホ画面ではタイトルしか見えないので、タイトルそのものが 「広告コピー兼あらすじ」 として働く、という構造です。
正直に言うと、最初は私もこのテンプレにどっぷり乗っかろうとしていました。「転生したら1980年のイングランド人サッカー選手だった件 〜…〜」 みたいな、ど真ん中のなろう王道案を、けっこう真剣に検討していたんです。
一方で「再受信」「父の戸」といった、文芸寄りの短いタイトル案も並べてみました。が、これはこれで 若い読者には重すぎる。そこで最終的に着地したのが、いまの形です。
- メインは英語で短く硬く『EXTRA TIME』(延長戦、という意味。同時に「転生して得たオマケの時間」のダブルミーニングです)
- サブはなろうの作法を残した長い説明型(〜引きこもりYoutuberだった俺が1980年のロンドンに転生し…〜)
つまり、なろうのテンプレを土台にしつつ、メインタイトルだけ振り切るというハイブリッド。サブを読めば中身が一発で伝わるのは、なろうの作法へのちょっとした敬意でもあります。
次回は、この作品を実際に「生成AIをチームにして」どう作っていったのか、その開発プロセスの話を書きます。
