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Q. 組織が大きくなればなるほど「自分じゃ無理」と感じる。どうするべきか?

少し状況を整理すると、このような相談をしてくる方は大抵創業者CEOであったり、あるいは急激に成長した企業の幹部などです。 最初は数人の「顔の見えるチーム」からスタートしたものも、徐々に組織が大きくなるにつれリーダーとして自分に求められる能力の違いを感じ、そのジレンマに苦しんでいるような状況です。

どのようなジレンマが発生するか。

とりわけ創業時のリーダーシップには、明確なビジョンを持つことやプロジェクトを前に進めるための推進力が求められます。またテック企業であれば技術者として優秀なことも求められると思います。 しかしながらある程度の規模に達したチームにおいては、もっと一般に言われる「マネージメント=管理能力」が求められるようになってくることが多いです。 例えば人数が増えることで如実になるのが「人間関係のトラブルの多さ」です。これは単純に考えて、仮に5人のチームであれば2人組の組み合わせは10通りしかありませんので人間関係に依存したトラブルの可能性も10通りです。しかし倍の10人のチームであれば組み合わせは45通りとなり人間依存トラブルの可能性は4.5倍になってしまいます。 つまり人数が増えれば加速度的にトラブルが増えてくるのです。これは経営者であれば誰しも経験則的に知っていることでしょう。

ある友人経営者のAくんが、彼はとあるスタートアップの創業時のCTOだったのですが、会社が大きくなって150人規模になったところで辞めました。 ある日、いつものとおり人間関係トラブルの仲裁に入っていた際に、目の前の問題を起こしているスタッフに対して「(うーん、ていうかこのおっさん誰だっけ?)」と思ってその瞬間にパッと目がひらけたそうです。「(自分が欲しくて採ったわけでもないこのおっさんのケアをしながらギスギスして仕事するのが自分がしたかったことなのか?)」と。 そして彼はそのスタートアップを辞めて新たにまたゼロから会社を立ち上げました。
そうです。答えはシンプルです。辞めて良いのです。

またとある先輩経営者のY氏は、創業した会社のCEOを途中で退いて自ら降格した経験を持ちます。 ある程度の企業規模に成長し、起業からの年数も経過し、そろそろExitを、と考えた時に「自分ではない誰かに頼もう」と客観的に考えたそうです。 そこで彼はCEOをExit経験豊富なプロ経営者に託し、自分はセールスのエリア責任者まで落ちました。しかし結果、その会社はBuy Outに成功しY氏は巨額のキャピタルゲインを手にしています。

またある友人Hさんは監査法人などでのキャリアを持ち、スタートアップでCFOとして100億円規模の資金調達を成功させた経験を持ちます。しかし彼は極めてさっぱりと「100億以上は僕のフィールドじゃないんですよね」とその会社をあっさり辞めてしまいました。また彼は付け加えて「ゼロイチ(zero to one)も僕のフィールドじゃないんですよね」と言います。

自らの強みと弱みを客観的に見極めて、適切なところで適切な活躍をし、不適切な場には入らない。 人間に与えられた時間は限られています。「トップパフォーマンスが出せる時間」というともっと限られています。苦手な領域で、やりたくないことをダラダラとやり続ける暇なんてありません。

このポストの内容は以下の書籍の一部(原文)です。興味のある方はぜひ書籍をお求めください。

幸せなIoTスタートアップの輪郭

qzuryu

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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