Q. ペルソナを作ることってやっぱり重要ですかね?

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企画の基礎としてペルソナを作ることは大抵やりますよね。 ペルソナとは英語でいうとPersonalの語源になったラテン語です。(多くの欧米言語はラテン語が元) 企画のプロセスにおける「ペルソナ作り」とはその企画が提供する商品、サービスを欲しいと思ってくれるであろう個人を具体的に考えてみるという作業のことです。

この作業はほとんどの場合でやった方が良いです。理由は、いざ具体的に考え出すと「実はあまり当てはまる人がいない」とか「このパターンの人をターゲットとするには販売価格が合っていない」とか事前に気づくことができるからです。

しかし一方で正しい運用をしないとドツボにはまります。はまり方のパターンはひとつだけ。それは
「ペルソナのことがわかったつもりでわかってない」

非常にシンプルな、この一点のみです。

それを防ぐための単純な方法がペルソナに近づくことです。手法はインタビューでもアンケートでも、色々な方法が考えられますが、私がお勧めするのは密着です。その対象となるようなペルソナの典型としばらく一緒に過ごしてみることです。

とある介護関連のプロダクトを開発していた時にいくつかの気づきがありました。
まず介護職のような特殊な仕事の実状は一般にはほとんど知られていないということ。またアンケートなどの手法では、表面的な事情は掴めるが、本当の意味でビジネスに重要なことは見えてこないということです。 例えば、ビジネスを成立させるためには契約を取る必要があります。契約が締結されるということは誰かがハンコを押すなりサインをするなりするということです。「そこまでのプロセスは?」「誰が決定に関わっているのか?」「どこが意見をまとめて誰が判断しているのか?」そしてそのような環境に囲まれて介護職の方々がどのようなジレンマを抱えているか。ここまでの情報を聞ききれるアンケートは、まぁ容易に作れませんよね。

他には彼らの日常。 時間割、身につけているもの、移動距離、使っている道具、棚に入っているもの、買わないと手に入らないもの、パソコンで入力するもの、手書きで書くもの。 こういう観察から圧倒的な気づきが生まれることが往々にしてあります。そしてそれは形式的な「ペルソナ分析」で整理された会議室然とした見解を容易に根本からぶち壊します。

ペルソナを作ることは重要です。しかしそれはあくまで「観察」の準備ができただけであって、まだプロセスの途中だということを忘れないようにして下さい。

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幸せなIoTスタートアップの輪郭

九頭龍 'kuz' 雄一郎 エンジニア/経営者, 日本の大企業からシリコンバレーのスタートタップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。 株式会社ClayTech Founder/CEO, 監査役DX株式会社 Co-founder/CTO, 株式会社スイッチサイエンス取締役, 株式会社2nd-Community取締役, 東北大学客員教授, 東京工業大学非常勤講師, 武蔵野美術大学非常勤講師, 他複数社の顧問など。

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