Draw Down〜地球温暖化を逆転させる100の方法〜についてメモ(エネルギー部門)

投稿者: | 12月 1, 2021

『Draw Down』はアメリカのライターが主導し、世界各国の研究者たちが寄稿したプロジェクト的な書籍である。
「ドローダウン=二酸化炭素が減少に転じること」のためにできることを、現状行われていることの展望と未来の技術の紹介の大きく2つに分けて示している。
特に「現状の理解」は私個人多くの項目の詳細を知らなかった(あるいは認識すらしていなかった)ため衝撃的だった。社会人必読書と言って良い。
しかし400ページ超の2段組ということで実質的なボリュームは一般的な単行本でゆうに3冊分あり、割と読むのが早い私でも読了に1ヶ月以上かかった。

ここではある程度エッセンスを抽出して整理したいと思う。
兎にも角にも「全体感」を掴むにはうってつけの書物だ。

さてまずはエネルギー部門について。

現時点で全く電気のない生活をしている人は世界に11億人いるとされる。 これらの電力供給を考える際に再生可能エネルギーの利用は必須であり、この問題が技術導入先や投資資金の勢力図が近年変化してきている理由のひとつでもある。

風力発電

インパクトは非常に大きい。
彼らが独自に算出している「期待される二酸化炭素削減量」でも全100項目の中で第2位につけている。
ポイントはコストが非常に安いこと。
よく各電力のコスト比較というものが出ているが、化石燃料は圧倒的に助成金を受けていることそして冷却水を無償提供されていてコストに含まれていないことなどによって相対的に良く見せていることがあるので注意が必要。
デンマークは既に全発電量の40%が風力発電となっている。

地熱発電

地熱発電の単純なパターンは、地中の熱で発生した水蒸気をパイプで吸い上げて、それによってタービンを回す方式。
地熱は人類のエネルギー消費の1000億倍存在すると言われているが、地熱発電に適した場所は10%未満しかない(日本はその数少ないエリアのひとつ)。
ケニアは1/2が地熱。アイスランドは1/3、エルサルバドルとフィリピンは1/4と地熱発電が進んでいる。
しかし地中を掘り返すということは、地中には二酸化炭素が貯留されていてそれが掘り出されること、悪臭など公害、地盤沈下などに十分な注意が必要である。
熱はあるが水がない場所に水を運んで地熱発電するシステムが使われる(EGS)

太陽光発電

イタリアで8%、ギリシャで6%が太陽光発電となっている。
特に水上のソーラーファームは水蒸気(温室効果ガスのトップ)の発生を抑える意味でも意味がある。
最初のソーラーパネルができたのは1884年。実はエジソンが最初の火力発電所を建てる2年前だった。
分散型ソーラーはオフグリッド環境(送電線が不十分なエリア)で威力を発揮するため、太陽光発電技術の開発に積極的に投資する国が徐々に変わってきている。
太陽光発電は製造時の炭素コストが高かった(焼却炉で燃やす工程が必要だったり)が、近年大幅に改善されている。
2016年にドイツでは「全電力の88%が太陽光発電で供給されている」という数時間を作った。

潮力・波力発電

元々は旧日本海軍が開発した振動水柱が源流となっている。
柱の中でブイが動くと空気の圧縮・膨張が起こり、それでタービンを回すという仕組み。 なんともエコな仕組みだが、しかし塩水で長期間稼働すること、海の生態系に影響を与えないこと、など課題は非常に多い。
実際、潮力発電所は北米で一個、というレベルで発電効率のベストな構造もまだ定まっていない。

集光型太陽熱発電

虫眼鏡で太陽光を集めて葉っぱ燃やすやつを超大規模にやるという大胆な発想。実は古くからある考えでレオナルドダヴィンチはプールを温めるために巨大なレンズを作ったという。
しかし資本集約的に建設せざるを得ないこと、発電効率が悪いこと、熱で鳥が空中で焼け死ぬ、など問題が多い。
一方熱そのものは電気を貯蔵するよりコストが安いという利点がある(溶融塩貯蔵)
溶融塩:224℃で溶ける。熱を吸収すると5-10時間はそれを維持することができる

バイオマス発電

再生可能エネルギーの中で一番発電所が多い。 しかし一部は森林伐採して燃やしてる。理由は廃材が足りないからなのだが要するに本末転倒である。
炭素循環の意味では最も自然に近い。
しかしトウモロコシ、ポプラ、スイッチグラスなどのバイオ燃料はエネルギー変換効率が悪い。 あまりにも工程が多く、その過程で輸送などエネルギーを使っている。 正味のところ消費エネルギーよりちょぴっと多く生産できてる程度であり、政策と補助金で成立してるだけで、いずれクリーンなエネルギーに取って代わられ消えていく方式だと考えられる。

原子力発電

考え方次第ではクリーンなエネルギーではある。
しかしこれ以上価格が下がらないと考えられているしアメリカでは新設を停止。ドイツでは全廃というのが世の中の流れ。
現状では中国が最も原子力に力を入れている。
なおNASAのハンセン(IPCCの報告でも多くの論文が引用されている気象研究者であり活動家)は原発賛成派。
再生可能エネルギーはまだ時間がかかる。原発無しに気候変動を止めることはできない、という主張だ。

コジェネレーション

加工の過程で無駄になるものを再利用するという考え方だがあまり発電で使われていない。
火力発電の効率は40%以下、内燃エンジンの効率は25%以下。 残りのエネルギーは地球を温めているために使っていると言える。
CHP:Combined Heat and Power
デンマーク、フィンランドでは木材でバイオマス発電し、その時の熱を暖房として使っている。 そうすることで冷却水が不要になる。 分散型発電とセットにして進めるべきで、そのため政府主導が多い アメリカは非常に出遅れている。

小型風力発電

実は世界では約11億人が小型風力発電に頼って暮らしている。 小型は効率が悪いが、低騒音で景観も損ねない。 高所は有利なのでビルの予備電源的に設置するケースもありその一例がエッフェル塔。

小型水力発電

安いしメンテも用意で環境負荷が小さい。 基本は山間部のオフグリッドだが、都市部では水道管の本管に設置する導管水力発電がある(ポートランド) しかし、ステージはアーリーで大企業は不在、でスタートアップが取り組んだ結果水路の流れを損なったり、水流が増えたときに耐えられなかったり、まだまだ問題が多い。

メタンダイジェスター

有機物が分解されるとメタンが出る。 食品ゴミ等を集めて微生物に分解させて発生したガスを燃料にする歴史は千年以上前からある。 それにプラスして、メタンを固定化させてそれを利用することも多くの発展途上国などで行われている。

産業廃棄物の焼却による発電

最悪の発想だが、スウェーデンはゴミを輸入してまでやっている。
二酸化炭素も出る。PMもこれでもかというくらい大量に出る。水銀、鉛、カドミウムも当然出る。
でもゴミ問題の解決のために燃やしたい国は多いということだ(特に土地の狭い国) 。
フィルターや再処理の技術がそれを一応支えている。電気フィルターで帯電させて落とす、とか。
廃棄物はリサイクルするより燃やした方がコストは安いし、廃棄物を燃やせばその分埋め立ては減る。 埋め立てはメタンを生むため、ある意味クリーンに燃やす技術が確立されればメタンが削減できる、というロジックも成立しないではない。

揚水式蓄電

電気に余裕がある時に水を上の貯水池に運んでおいて電気の需要が高くなるときに落として発電するというもの。 山で荷物を上まで上げてレールの回生ブレーキの摩擦で発電というのもある。

太陽熱温水

住宅のエネルギー用途の1/4が温水であり、温水を太陽の熱で直接的に作り出せば節電になる。 キプロスとイスラエルでは住宅に設置義務化されているが初期費用の高さと設置の手間が課題。

スマートグリッド

地熱、水流、バイオマスが定常的で季節性もなく手に入るエネルギーである。 一方、太陽や風力は気候によるし時間、季節、変動要素が大きい。 これらを統合し社会生活を支えるための電力供給を安定させるために必要なのが新たなグリッド構造だ。

【新技術や新たな試み】

核融合炉

トライアルファエナジー:カリフォルニア州アーバイン
従来の三重水素、重水素の融合ではなく、水素とホウ素の融合を目指している。
従来の方式だと中性子が発生し、核融合炉は徐々に放射能で汚染されるが、水素ホウ素は完全にクリーン。 しかし必要な温度は摂氏30億度。
創業18年(創業者はもう亡くなっている)でプラズマの安定(コマのように回転させる)を達成。 あとは高温をプラズマの回転の力で達成するプランらしい。

人工光合成

ノセラ:ハーバード大の研究者
触媒とバクテリアに高圧の二酸化炭素を与えると光合成の効率の十倍で水素エネルギーを作る

波力発電

シアトルの会社が開発
フロートと錨の間の波による距離変動を磁石で電気パルスを起こして電力に変えるというとてもシンプルな構造。
メンテナンス、電力伝送などコスト整合性がまだまだ。 しかし海の運動エネルギーは現在の人口で必要とされる電力の百倍のポテンシャルがあるとされる。

ケルプ

大豆原料のバイオ燃料は化石燃料の4倍の二酸化炭素排出量になっている。 ケルプは有望な代替だ。
ジョージア工科大学:ケルプから抽出したアルギン酸塩でリチウムイオン電池の蓄電力を十倍にする技術
世界の海の3%を海藻農場にすれば全エネルギー消費をカバーできるという壮大なプランもある。