スタートアップの悪い噂はすぐ広まる
あまり誰も言わなくて、界隈にいる人なら誰でも知っていることを書こう。
スタートアップの悪い噂はすぐ広まる。
「どこどこはそろそろ資金がショートしそうだ」
「キーパーソンの誰々さんが辞めるらしい」
「先月資金調達クローズするって言ってたけどリードが降りてぽしゃったってさ」
色々なパターンがあるがこれらの情報が出回るのはものすごく速い。
それこそ世間を1, 2年先取りする
のだ。
すごいでしょ。笑
情報が速い理由は主に「社会が狭いから」
そして「スピードを重視する人間たちにとって情報がすこぶる重要だから」だろう。
情報は流通してなんぼの代物だ。
自分のところに情報を集めてばかりの人にはいずれ情報が回ってこなくなる。有益な情報をきちんと提供する人(コンフィデンシャルなものを漏らすとかそういう程度の低い話ではなく)にはまた有益な情報がきちんと回ってくるようになる。
悪い噂は時に有益である。
だれだれが辞めるという噂はその彼/彼女に近しい人材を欲している別の会社にとっては垂涎モノの先取り情報である。スタートアップ経営層(およびキーパーソン)なんてだいたい繋がっている。個人的に会ったり飯を食ったりするのは簡単だ。当然その時に彼/彼女の身の振りの話題が出るのは至って自然なことだろう。
資金調達を断られた情報は、それを元に自分の資金調達の作戦を立てるために役に立つ。どこどこのVCはやっぱこのカテゴリには入れないかぁとかどうやらどこどこでは資金余りが起きてそうだとかそれはここから流れた金がどうこうしてアレコレ、というような。
誰かの経営の失敗は、自分の経営に対しての反面教師となる。だいたい失敗パターンなんてみんな似たようなものなのだ(って言いながら自分もやっちゃうんだけど)
とはいえ噂なり裏情報なりが回るということは、いずれにせよそのスタートアップは「ホットなスタートアップ」だと言える。出来たばかりで何やってるか誰も知らない会社やとうの昔にみんなの興味がなくなった会社の噂など流通させても価値が低い。
そこで、極めて面白いのが、
悪い噂を裏で聞き、良いニュースを表で見る
ということがひじょーーーーーーーーーーーーーーーーーに多い。
これが先ほど言った「1, 2年先取り」の意味である。
資金調達のプレスリリースの裏で、
年内ローンチの可能性はもう無くなった、なんて話を聞く。
(なんで?そのために調達したのに?いやいや、そこにはきちんと答えがある)
存分にハイスペックな人材を引き抜いたってFacebookの投稿の裏で、
リードエンジニアがメンタルやられて辞める、なんて話を聞く。
(え?彼でもってた会社でしょ?今後どうする気なの?いやいや、そういうことなんすよ)
〇〇賞を受賞!なんてWBSで観ながら裏で、
資金的に危うくてどうやら年は越せなさそうだ、なんて話を聞く。
(大丈夫か?いやいや、大丈夫じゃないんだけどね)
外向きにイイ感じに見えながら実は終わっている会社などゴマンといる。
一個の判断ミスや一人の人的喪失であっけなく終わるのがスタートアップの脆さでもある。
しかし一般に、既に数億単位の資金調達を終えている会社であれば、よっぽどヘマをしない限り1年程度ではそう簡単には死なない。特に人件費がさほどバブっていない日本では。
つまり、情報が流れてから1, 2年してから死ぬ、のだ。
でも同時に面白いところはこれらの情報の流通はゴシップ的なノリは皆無で、皆が至って真面目に紳士的に情報を取り扱う。良いことも悪いことも他人のことで盛り上がることよりまず自分の足元のことをやろうというスタンスや、不幸なことが起きた際には「みんなの代わりに落とし穴を見つけてくれてありがとう」というスタンスもまたスタートアップならではの、ある意味「変な感じ」なんじゃないかな。